ONE2〜永遠の約束〜with VOICE

 ソフマップ町田店の中古エロゲー売り場でたまたま見かけたので、確保しておきました。ただ麻生久遠シナリオのためだけに2980円、我ながら素敵な漢っぷりです。もちろん麻生久遠シナリオを終えた今となっては、いつ近所のゲームショップに売りに行こうかと思っているんですけどね…。
 ぶっちゃけ、がっかり。というか深月遥シナリオにおけるバッドエンドという位置づけだった、本来の麻生久遠エンドを、その位置づけのまま彼女との恋愛を回想シーンとして追加しシナリオ化しただけという、なんともやるせない空振りっぷりでして。完全に独立した麻生久遠のオリジナルストーリーが展開されると期待していただけにねえ。"久遠"だなんて、もうそのまんま永遠というような名前のヒロインだけに、他ヒロインシナリオ以上に作品テーマを深く濃くえぐったような野心的なシナリオを予想してしまうのは、「手前勝手な妄想」で済まされてしまうものなのでしょうか…。
 その回想シナリオ自体も、「よくできたSS(サイドストーリー)」といった程度の出来で、度を越えてひたすら恥ずかしいバランス感覚のない甘あまっぷりが、それはそれで良いんだけれども!「はじめに萌えありき」の強引な展開には説得力もオチもついてなく、申し訳程度に挿入された作品テーマ的なものも浅薄で、概して「それがどうした」的シナリオは、まさに回想シナリオ以上でも以下でもなく。なんかこう、ただただ、がっかり。
 たとえば僕は、こんなシナリオを想像していたのですよ。

 音楽室でピアノを練習する麻生久遠に出会い、希望に満ちた純粋さで元気いっぱいな彼女のチョップをさんざ浴びていくうちに主人公は思い出す、幼い頃の記憶。
 幼いころ通っていた学童教室に、久遠のように希望にあふれた大きな瞳をした暴力少女がいた。彼女はピアノが大好きで、そんな彼女の弾くピアノと、彼女自身が主人公は大好きで、彼女ともっと一緒にもっと近くにいたいがために、主人公もピアノを練習し始め、ふたり揃って楽しくピアノを連弾するようになる。ふたりが決まって弾く曲は、彼女のお母さん(作曲家)がふたりのためだけに作曲してくれた童話的なあたたかいピアノ曲。放課後のオレンジ色の夕陽に長い影を作るピアノと、身体をくっつけて椅子に座ってピアノを弾くふたり。そんなしあわせな光景は、しかし唐突に崩れ去る。
 家族でコンサートに向かう途中に遭遇した自動車事故で、両親は死に、彼女は一命は取り留めたものの両腕の自由をなくしてしまう。ピアノが大好きだった彼女は、生きる希望すらともに喪ってしまった。ひとり教室でピアノを弾く主人公は、けれどもひとりでは弾けないあのピアノ曲。そうして彼女はこの世界から消え、彼女の記憶も世界と、主人公から消え去ってしまった…。
 麻生久遠と接していくうちに、彼女と親しくなっていくにつれて、主人公は失われたはずの記憶とあのピアノ曲を少しずつ思い出していく。封印していたピアノの技術をも取り戻し、意外にもピアノ演奏の素養があることを知り久遠は、さらに彼との心の距離を縮めていく。主人公に教えられる形であのピアノ曲をふたりで連弾する仲睦まじい日々のなかで、しかし主人公の心の中では着実に、かつて垣間見た永遠の世界への扉が開かれていくのだった…。|<  まぁ、ざっとこんな感じ。ちょびっと麻生久遠回想シナリオと重なる部分はあったけれど、彼女をシナリオ化するなら、ピアノをふたりの共通項にして作品テーマと結びつけて描くべきだよなぁ、と。もちろん「ONE2〜永遠の約束〜with VOICE」は、本気で麻生久遠をシナリオ化していないので、作品人気にあやかって発売されるファンディスクにおまけとして挿入されそうな、後日談かサイドストーリーの類でしかなかったという事実が判明した時点で、どうもこうもならない話なのですが。  しかしただの回想シーンで済ますとはなあ。想像もしなかったよ。(←貶し言葉)