ゲーム作品として論評するに値しないモノ

 とにかくこの作品はすごかった…。何がすごいってそりゃあ、バグの質と量が、である。というよりこんな状態でよく発売することができたものだと、その並外れた無神経さに率直に賞賛を送りたくなるくらいのスバラシサ。この作品をプレイすることで僕は、作品内容とは全く別の、本当に貴重な体験をさせてもらったような気がした。感謝は…しないが。

 まず当然のことながらテキストは誤字・脱字多数標準装備。誤変換も酷く、ひらがな表記であるべき単語に漢字が当てられていたり、漢字表記であるべき単語がカタカナ表記になっていたり、文節が入れ替わって前衛的な表現と化していたり、ウィンドウの左上、会話(テキスト)の主体名(主人公の名前やヒロインの名前)が表示される箇所にテキストの文頭部分が混じったり。していないはずなのに、「あのときは〜したよね」という会話が出てきて首を捻ってみたり、果ては1センテンスまるごと抜け落ちていて文章の脈絡が途切れていたりする始末。音声との関連では、声優の演技内容とテキスト内容が違っていたり、ヒロインの相槌の音声が抜けていたり、句読点の位置がずれているのはともかく、音声とテキスト表示がまるまる1センテンス分ずれていたり、前後で入れ替わっていたりもしていた。グラフィックとの関連ではヒロインの表情がテキスト内容とあまりにもかけ離れたものであったり(悲しいシーンでもないのに泣いていたり、恥ずかしがるシーンでもないのに頬を紅くしていたり)、同じ画面に同一のヒロインが別表情で2人存在していたり(分身)、さらには場面とは全く違う背景が表示されたり、学校の制服を着ていたはずのヒロインが次の瞬間私服に着替えていたり(歌舞伎役者もビックリだ)、ヒロインの立ち絵と主人公の親友の立ち絵が入れ替わっていて、まるでヒロインが親友の変装をして喋っているようで大笑いモノだった。

 そう、この程度(とていっても格別すごい程度なのだが)ならゲームの進行上それほど問題となるものではないと強弁する事ができ、苦笑・失笑・大爆笑するだけで済ませられるのだが、この作品に巣くうバグの質は笑って済ませられる域をはるかに超えていた。エピローグのCGが表示されなかったり、肝心のSEXシーンでCGが表示されなかったり間違って表示されるのも怒り心頭モノだったが、あるヒロインの1イベントがまるごと抜け落ちていたりするのだ。つまり、学園祭のクラスの看板をヒロインと一緒に製作するイベントをまるごとすっ飛ばしておいて、その学園祭が終わった後の打ち上げで主人公はヒロインに、「一緒に看板作ってくれてありがとう」などと言い放ちやがる。このイベントのCGはOPムービーにもしっかり挿入されていて、どんなイベントなのか楽しみにしていたのに…。これはあまりにあんまりだ。

 さらに作品存在の根本を否定する致命的なバグとして、Windows2000でプレイすると、とあるイベントで特別なCGを表示するときにエラーが発生しゲームが強制終了してしまうものがある。確かに僕がこの作品を最初にインストールしたのはWindowsXPだ。パッケージにはWindows2000まで対応と書いてあったからそういうエラーが発生してもやむをえないかもしれない。だが、パッケージにはWindows2000まで対応と書いてあるのでサブマシンのOS(これもWindowsXP)をフォーマットしてWindows2000を再インストールしたのに、再度同じシーンでエラー落ちしてしまうのはどういうことだ!しょうがないのでWindows2000もフォーマットしWindowsMEまで遡ってインストールしてようやくそのイベントCGを拝むことができるようになったのだが、それはヒロインが居眠りをしているシーン。「おい樹里先輩!(ヒロインの名前)眠ってないでちゃんと起きてエラー直しとけよっ!!」と怒鳴ってしまったものだ(ちょっと誇張表現)。

 もちろん、発売直後に修正パッチがメーカーWebで配布され、その後バージョンを重ねたようだが、僕がプレイを始めた2004年11月24日現在、メーカーWebは消失し、修正パッチファイルをミラーで置いてあるWebも見つからなかった。まぁ「今頃中古で安く買ってプレイしているお前が悪い」、と言われれば返す言葉もないのだが、それにしてもClearはどこいったんだよー…。