【総論】

航空モノっぽいあの設定に興味をもってこの作品をプレイした人にはご愁傷様な、薄っぺらくて適当で、結局シナリオにとっては「どーでもいい」と捨て去った感のある航空ネタ。また、今は亡き父親と主人公の大切な「絆」として、また、父親がいないという現実を心のどこかでいまだ受け入れられていない「精神的問題」としての、「夢」という設定に対する説明不足・エピソード不足・浅い描写、そしてあまりにいい加減な「オチ」。ある時は「夢」を諦めることが「死ぬより辛いこと」であったり、またある時は「また今度やればいいこと」であったり。その矛盾自体もそうですし、この矛盾を成立させるための力強い物語性が皆無だった、そう断じなければならないでしょう。
不器用なほど真正直で純粋なラブストーリーとして自体は僕好みですし高く評価したいですが、この「夢のつばさ」という作品がユーザーに「オリジナリティ」として提示したそれらの要素を、その物語のうちであっさりと否定してしまったことは、大きな罪として製作者側にはきちんと自覚してもらわなければいけないでしょう。作品自体の質ではない、作品と、プレイヤーに対する「裏切り」の姿勢、つまり志しが誤っていたと、僕はそう思います。