「男」という不安
- 作者: 小浜逸郎
- 出版社/メーカー: PHP研究所
- 発売日: 2001/04
- メディア: 新書
- クリック: 1回
- この商品を含むブログ (7件) を見る
なるほど。確かにそう言われてみれば男になること男であることは意外と大変で、女になること女であることは意外と楽であるようです。女にとって大変なこと損をしてることはかなり明確で(立ちションベンができなかったりあぐらがかけなかったり子どもを産まなければならなかったり)、それ引き換え男にとって大変なことは女のそれほど明確ではないという点、大変さの現れ方が質的にどうやら違うらしいのです。
例えば恋愛を例に取れば、女は男にモテるために自らの身体を美しくしていくことが必要で、その様式や方法は文化や流行によってかなり明瞭であるのに対し、男は女にモテるためにただ筋力をつければいいわけではなくて、ダイエットすればいいわけではなくて、そこには「個性」というようなやっかいなシロモノが(女よりも多少)介在しやすいわけです。そして女側に男の選択拒絶権が握られているのですから、妊娠・出産以前の恋愛に限っていえば大変さの高低は歴然としているとも言えるのです。当たり前のようで目からうろこ。
フェミニズム批判を通じ平衡感覚に優れた現状肯定的認識をもって、男のおかれている生理的・社会的・文化精神的諸相をざっくばらんに分析しつつ、「男である以上男でなくちゃならないんだから」という元も子もない根本を楽観的に肩肘張らずに受け入れようよ、ちょっと強引ところもあるけれど、男をちょっとだけ前向きにさせてくれる応援歌のような本でございました。
理念的に叫ばれる男女平等思想や、暴力的で病理的な男性像、常に虐げられている女性像に「それは違うんじゃないか」と楯突くことを恐れず、生理機能の違いを素直に認めた上で性別的役割分担(男は仕事・女は家事)を自然なことであるとし、「男らしさ」とは「女子どもにきちんと向き合う感性を失わず、最大限に責任を果たすという精神的な努力の形跡」であると意味づけてくれたことは、男にとって割と感動的で、女にとっても大変"くつろげる"誰にとっても居心地の良い思想であるように思われます。そう信じたいです。
この人の著作にもうちょっとつきあいたくなりました。ラフで張りのあるいい文章だなあ。(5/100)