牧野由依

アムリタ

アムリタ

M-1「アムリタ」は、閑静でしとやかなメロから、たちまちスケールの大きなサビを「どうだこの感動」とばかりに突きつけられ、唐突に湧き立つ激情は、(違和感を覚える隙すらなく)さらりと溶けてなくなってしまったかのようにして、そう、「アムリタ」という妙に聖的な言葉へとひっそり叙情的に収斂していく。
そんなうねりのたくましさを、どこまでも穏やかな心地で受け入れてしまう、意外の大曲。
スカスカだったり苦しげだったり無理に気取ったり乱暴気味になったり、コロコロ変わる声の表情と歌唱力の低さが紙一重で、いかにも生っぽい牧野由依の朴訥なボーカルは、聴いていて気が気じゃないというところも含めて、いじらしく感じられなくもありませんね。
M-2「you are my love」はTVアニメ版「ツバサ・クロニクル」の劇中歌でした。
飾り気のない寂寥なピアノに編み取られるように、ひっそりと紡がれる健気で深い想いの調べ。ささやくように牧野由依の声が、いまにも途切れてしまいそうな儚さ、拙くもいとけなく泣き上げるサビの歌唱がしたたかに、せつない。
キャラクターソングはそういうものだとはいえ、上手い下手では語れない趣きある物悲しさその絶妙さ加減は、もはや惚れ惚れするしかありません。
ウンディーネ

ウンディーネ

詩情豊かなピアノとたおやかなハープ、情感したたる弦楽にパーカッション・マンドリン(?)といった風趣ある音色が、あくびが出るくらいゆったりとした時間のうちでひどく鮮やかに映える、異国風情を和えつつほっとするような癒し系サウンドが印象的、とびきり。
サウンドが醸しだす瑞々しい雰囲気に、逆らわず、意識せず、ごく自然に寄り添う、歩調を合わせているように感じられる牧野由依のボーカルにも好感が持たれます。M-1ウンディーネ」。
この際かすれているのが返って幻想的。サビの高音域を実声・裏声巧みにきっちり歌い分けることで無敵の感傷主義を実装しつつ、決め技的に炸裂する"溜め節"にはっとして、うっとり。
ボーカリスト牧野由依の個性を有機的に(欠くべからざる存在として)織り込み、その上で音楽として綺麗に完成した、美しい情景漲る名曲だと僕は思ってしまいます。
アニメ「ARIA the ANIMATION」のどこかで出だしだけ流れている気がするM-2「シンフォニー」。
素直でかわいらしいボーカルを前面に押し出した、さわやかで親しみの感じられる曲。ふわふわしていて、甘くて、綿菓子の雲のような味わい、つかみどころがないけれど大切なあたりまえという日々。
Go Tight!

Go Tight!

そしてM-2「オムナマグニ」。
この曲が牧野由依の代表曲という点はやっぱり譲れません。
清冽で優柔で絶対聖性の幸福あるいは母性。聴いている僕を童心へ強制送還するデバイス(鍵)。無垢で明澄な牧野由依の歌声その"生まれたままの魂"が、僕の"そのまま"を"ありのまま"に仕向けてしまうのです。怖いくらい惹かれてしまうのは、きっと僕のロリコン・オリジナル。属性主義的宿命論。
ぶっちゃけ、好きなんだから仕方がないじゃんかよ。