焼きたて!!ジャぱんO.S.T

音楽は岩崎琢さん。
謹んで僕は、今後、作曲家岩崎琢さんの代表作にこの「焼きたて!!ジャぱん」を挙げさせていただくことにしたい。そう決意せずにはいられないくらい素晴らしいO.S.Tに出会ったものです。
ライナーノーツで一言岩崎さんが宣言しているように、音楽が果たして媚びていない。作品の演出に貢献するというより、作品をただの口実にして、視聴者の情感に奉仕するというより、視聴者をずいぶん知らん振りして、その音楽は快活に、ゆるやかに、芳ばしい広がりをたくわえて存分に満たされてゆきます。
音楽がまず本来音楽らしく在ることを求める。その無垢な愉しみから作品が、視聴(鑑賞)者が"わざわざ"味わいを取り出しているという気にさせられるくらい、奔放な音楽性はむしろ迷惑染みていて小気味いい。
本当のことを言うと、アニメの方は途中から観始めたけれどつまらなくなって、今は観てなくて、だからサントラにもそんなに期待してませんでした。音楽が岩崎さんだからとりあえず聞くだけは聞いてみようかな、と。
そしてこう叫ぶわけですよ。
「なんやてー!?」(お約束)
岩崎琢音楽の醍醐味である、小洒落て流暢なメロディ、瑞々しいりりしさが滴るストリングスはほとんどの曲で遺憾なく発揮されていてますが、特に「焼きたて!!ジャぱん」は、タイトル同名であり作品テーマ曲でもあり、ここぞとばかりに120%岩崎節、この曲に惚れずして何が愛か、リアクションか。アコーディオンをベースにした香り豊かなフレンチポップがオイシイ「パンタジアの娘」は、プレリュードの可憐なピアノが存在感薄い某ヒロインを思わせますね(かわいいのに)。往年の名作映画音楽風「ビター・スウィート・セレナーデ」、感動的なストリングスとビオラソロの憂愁なメロディがまことに美しい。
アンドレ・ギャニオンの音楽を彷彿とさせる静謐に深い叙情、「キャシー・マイ・ラブ」、癒されます。甲斐甲斐しくも逸るハイテンポ、重くのしかかるように低音主体のメロディ、レンジの駆動をイメージさせる電子音が妙に甲高く響く、この緊迫感はまさに「いざ、焼成!!」。厚みあるメランコリックなストリングスが誠実な感傷を切々と歌い上げる「スターティング・オーヴァー」。そして「いざ、焼成!!」やオリジナルver.と共にパン製造シーンや解説で何かと聞く機会の多かった「焼きたて!!ジャぱん(フラメンコ ver.)」、馴染みのある曲をトリに持ってくるところなど、もうまさに「このCDをかけながらパン作ってください」仕様。
主題歌3曲フルサイズ収録も純粋にうれしい。特に「To All Tha Dreamers」は血がたぎるように感動しました(最強単曲エンドレス)。
いやあ、久しぶりに良いサントラを満喫したなあ。アラブ音楽マニアの友人は元気かなあ。