MONSTER O.S.T

「MONSTER」オリジナルサウンドトラック

「MONSTER」オリジナルサウンドトラック

音楽は硨島邦明さん。
このO.S.Tを目を閉じながら聴いていると、まるで瞼の裏に(大聖堂か何かのような古びた)抽象空間が鬱蒼と浮かび上がってきて、それが異次元のなかで歪んでいくかのような、空識覚的な苦痛に眩暈を覚えてしまいます。僕はもともと音楽というものに心の安らぎや、温かみを感じたい人なので、だからあまり聴きたくない音楽ではあります。
音楽?このサントラはアニメ音楽というよりも、映画音楽的であって、そこにあるのは様式としての音楽。構造としての旋律。よく「劇伴音楽が作品の奥行きを増している」と表現されることがあるけれど、「MONSTER」のO.S.Tに限っては、作品自体のありよう、人間世界の構造と、人間精神の様式(奇怪で鮮烈な)を端から落魄的に建設しているのです。
たとえそれは言い過ぎだとしても、作品それそのものを耽々と設計しようというような"あつかましい不敬さ"にはまず間違いありません。「壊れかけている」と一言で表現してしまいたい誘惑にかられます。
ともかく、ちゃんと聴いていると頭が痛くなってくる音楽。それが賛辞なのか批判なのか、実は僕にもよくわからないんですけれど。