恋風O.S.T

音楽は吉森信さん、宅見将典さん。
空をたゆたうしゃぼん玉のように、ふわふわとした幻想のような憧憬と、ゆったりとした留まりのような平穏をぽかぽかと感じさせる音楽。おもちゃ箱の中身のように色とりどりな音色による、シンプルで控えめに演奏されたサウンドトラックは、少女趣味的なノスタルジーを、お茶目に、こまやかに、聴き手へと掻きたててやみません。
郷愁にひそむ幸せな日常その美化された感懐を、微笑みながら思い起こすのとおんなじベクトルで、「恋風」という夢見る少女のための音楽は、やさしいフィクションとしてしかるべき甘く純真な日常をのどかに描く。だからこそ、ちょっとした空気の変化を敏感に感じ取ってしまい、ささやかに波立つ印象にどきどきしてしまう。日常という夢を感覚的に共有してしまっているわけです。
思い出の遠くで父親が聞いているラジオのプロ野球中継のように、何かの拍子に聞こえなくなってしまいそうなくすぐったい情緒を、手放すまいとしているときの心地を言葉で表現しようとすれば、それは「純粋」。鼻腔をくすぐる青春文学的な曲名もふくめて、寝る前に聞いておきたいと思わせる純粋な音楽群ですね。
自分のための子守曲、という意味ではM11「だんだん、もっと好きになるっ!」、M14「優しさだけなら幾らでも」、M21「おやすみ。明日は晴れるかな」、M23「雪のように 夢のように」、M28「悲しき想い」あたりが特に印象に残りました。もちろんOPソング「恋風」は別格。巷では「恋風」のフルサイズ収録がこのCDの存在意義の50%は占めているんじゃないかという説まであるくらいです。
僕としても、やっと聴くことができて実は感慨ひとしお。岡崎律子さんの詩が実に作品らしく、ぽかぽかと可憐な曲。何度も聴いていると無性に悲しくなります……。