コミティア75

今回初参加のコミティアで購入させていただいた同人誌の感想を、つらつらと。
そういえば、ブースにへばりついて緻密な迷路みたいな絵をわき目も触れず描いていた人が、印象に残っています。ちょっと見ていたけれど、あのままずっと見ていたら、どこぞの異世界にトリップしていたかもしれませんねえ。

睡蓮―「おわらない、夏休み。Ⅰ-1」「〜Ⅰ-2」「〜Ⅱ」「〜Ⅲ」
http://www.k2.dion.ne.jp/~craftbox/

気になって、続き物で、最新刊で完結ということなので4冊全部揃えてみました、幼女を誘拐して隠遁生活を送る青年のお話。終末的な雰囲気を漂わせる、ひどく静かで虚しいほど知性的、ゆるやかな観念世界に浮き沈む童話のような日常。いつしか「先生」と呼び慕われるようになった青年は、激しくも規則的な雨音の感傷によって彼女とこの居場所が少しずつ壊れていく予感に、恐れ、そして……望む? あの優しくも冷徹な結末が、あいまいだったこの時空に終止符を打つとき。いつともどこともまぼろしともしれないふたりだけの物語が、終わるというたった1頁に、僕はどこか救われていたのかもしれません。あの青年はいったい何がしたかったんだろう。とはいえ僕らは、何も何かをするためだけに生きているわけじゃない。雨に自己をうち震わせ、雨に世界を塞がれる、傘を持つ手を離さずに、片方の手にぬくもりを欲した、だから決して抱きしめない。傘を手離すとき、それは"出会い"と、"別れ"……。好きだなあ、こういうじめじめした内向的な感性。

T-NORTH―「笑いの天使」「嫌煙家 番外編」
http://www5.airnet.ne.jp/takex2e/t-north/index.htm

「笑いの天使」は、親友である天然ボケのマスコット系女の子と、漫才コンビを結成したいツッコミ役のクール系女の子が繰り広げる(巻き込まれる?)、ドタバタお笑いコメディ。お話的にもう無茶苦茶なんですけど、軽快なノリやお話のテンポがこなれていて、何よりおかしくてかわいいというのが良いですね。「嫌煙家 番外編」は、ワンピースの女の子が気に入ったので買ってみたけれど、中身は少女向け漫画。イケメン相手の素面なド妄想の恥かしさと意味不明の嫌煙っぷりが作品の閉鎖性をいやがうえにも高めています。

ミュンヒハウゼン症候群―「ココアリロン 宿題」
http://www004.upp.so-net.ne.jp/maya/

今webを探してみて気づいたけれど、ギルメンが「おねがいマイメロディ」の同人誌で一番面白かったと言っていたサークルでした。買った本は、女の子4人組がなんとなく繰り広げるほんわか日常ギャグストーリー。アクの強い性格付けと、仲良しとやさしさと、いい具合に壊れた発想が商業ベース風に安定していて、初めて読むのに妙に親近感が沸いてしまいますね。押しの強いキャラデザも好みだし、文句なく気に入りました。このサークルは今後要チェックですねー。

onion―「onion Vol.2」
http://www13.plala.or.jp/onion323/

イラスト前半・ギャグ4コマ後半の内容。イラストは正直モノクロで発表するのはどうかと。webに展示してあるイラストを見て強くそう思いました。異国情緒ある郷愁的なイラストはまるで絵本画のようで、とても素晴らしい。それと4コマ漫画の方もとても面白かったです。あどけなくも可笑しみのある絵柄でキレのいいギャグセンスを惜しみなく炸裂させていて、これぞまさにギャグ4コマの創作。したたかに大笑いさせていただきました、ありがとうございます。

付和雷堂―「-侘-エプロン男爵一服献上」

メイドさん2人と小学生のお坊ちゃまだけで繰り広げるギャグ4コマ。大御所サークルみたいなので初心者の僕が今さら感想書くまでもないような気配がします。でも、「銀河英雄伝説」の名言を軽々にパロって欲しくないものだと眉をひそめてしまうのは、信者ゆえの過ちでしょうか。巻末に解説コメントを付けるほど元ネタに依存しきったパロディがメインの4コマ。半端なオタク者としては結構わからない部分もあったけれど、さすがに切れ味抜群のネタ回しと筋のいいギャグセンスはピカイチですねえ。

Plastic Age―「彼女が死んだ、私たちに嘘をついて」
http://www.funk.ne.jp/~plastic/

冒頭で唐突にクラスメイトが自殺、彼女を除け者にしていたクラスの女子生徒たちがむきだしの感情をぶつけ合い、責任をなすりつけ合う、刺々しくも逃げ道のないドラマ。女子グループ制や、クラス内での力関係というありふれた現状が、ごく日常的にいじめを生み出す経路となってしまっているというのは、ありきたりの話だけど。そこから導かれた「みんな悪かったんだ」というお約束的な共犯意識を、個々人の罪状をうやむやにする欺瞞だとして敢然と否定し、自分たちが彼女に対して何をしてしまったのかという事実そのものを、まざまざと炙り出し、痛切に刻み付けるような容赦のない物語展開は圧巻ですらあります。学校があって、家族があって、友だちがいて、子どもである自分そのいずれにも逃げ込めない、そのいずれからも決して逃れられないということの恐怖に、すくみ上るとき、きっとすぐ"そこ"に自殺はあるものなんでしょうねぇ。

みずたまり―「てんのとり方」
http://www16t.sakura.ne.jp/~ike3/

テストの点数を上げるためにいい勉強法をと頼む彼女に、学年トップクラスの秀才であるクラスメイトの女の子が授けた勉強法とは、「今日から勉強しないこと」!? 一理あるようで小数点以下すら心許ない無茶な理屈をごねて弾けたり凹んだりする女の子ふたりのボケ&バカストーリーに、爆笑すること間違いなし。ある意味。

視覚音痴―「濃縮還元ほにょろけさん3」
http://www.k2.dion.ne.jp/~s-onchi/

白黒色調鮮やかにファンシーポップなロリータ画風が、古拙的でシュールなメルヘンを作品性高く仕立て上げています。お気に入りの絵本をベッドの中に抱えて眠ってしまう子どものように、モノとして妙な愛着を抱かせる同人誌ですね。表紙くらいなら、舐めても平気かな?(じょ、冗談ですよ?)

花苺―「border line」
http://k8715.hp.infoseek.co.jp/

クマの着ぐるみの人に恋をしてしまった女の子のお話。いまどきの女の子っぽいぽわぽわした手書きネームと、脱力系二等身キャラを織り交ぜた気心の知れた表現が、不躾だけど微笑ましくて、慣れてしまえば結構居心地の良い世界かもしれません。男性的な勢いに任せない、細やかで甘美な女の子視点の性描写もかわいらしく、なんていうか、こういうキュートな18禁同人誌というのもいいですね。

SOFT-COTTON―「MYSWEETS」

どちらかというと、後半にちょこっと収録されている和風短編を膨らませて漫画化して欲しかったなと思いました。

AirOLG―「鶏レバーのイタズラ情熱的」
http://www.kit.hi-ho.ne.jp/kila/

この本だけ読むと、幼女に発情しまくっている謎の男の人がいかがわしいだけでアレですね。つまり羨ましいということです。

あまずからずや―「Erst fabel」
http://www5.kannet.ne.jp/~azuya/

モノクロがとても映える作風で、一目見て購入してしまいました。こういう人にスケブとか描いて貰えたらきっと感動モノなんだろうなぁ。本自体はかなり以前の既刊です。

かんのんのすてき―「Lady Links Cat」
http://www.geocities.co.jp/AnimeComic-Ink/4105/

ブラコン気味とツンデレなお嬢様ふたりが、各々猫と犬のメイドさんを使役して勝負するドタバタ萌え物語。お話自体はどうということはないんですが、作画が安定してハイクオリティなのと、メイドのご主人様がお嬢様というのは意外と斬新(かも)。

OSARUの会―「animal fancy」
http://usami.halfmoon.jp/

いろんな女の子が出てきて、誰が誰だかわからないうちに、読み終わってからそれが短編集でみんな別々のキャラクターだったということに気づくというていたらく。なんか無念。

すあまフレンズ―「ドルチェ・ヴィータ4」

ヘテロクロミアオッドアイ)の女の子がメイドとして住み込みで働いている、「最遊記」の偉そうな坊さん顔の売れない小説家宅での、ほんのり恋愛風味なしあわせストーリー。ぱっと見「ローゼンメイデン」の翠星石をイメージしたけれど、全然ツンデレではなくむしろ素直で、恥かしがりやで先生思いで語尾はあくまで「―です」(「はい、です」「あるですねー」等々)って……やっぱり翠星石じゃないかっw そういう意外(反転)性がしみじみとかわいらしくて、妙に気に入ってしまいました。「〜4」ということはシリーズ化されているんでしょうか、webが見当たらないので難しいかもしれませんが、機会があったら他の本も読んでみたいですね。

UnisonBell―「オレンジスウィートエッセンス」「ハッピー・スタディ・ライフ episode.2 うららかなる音に」
http://unisonbell.vis.ne.jp/

曰く、「メガネは何かの象徴ではなく、それをかける本人の本質の主張である」という、「オレンジスウィートエッセンス」。ただ、そのテーマに脈絡するセリフが言葉として浮き足立っていて、さて漫画としていったい何がしたかったのか、物語としての押しがやや不安定な気がします。進研ゼミに付いてくる漫画くずれというか、「何より伝えたいこと」(例えば宣伝メッセージ)が骨ばって強調されていて、面白いとかじゃなく、なんとなく釈然としない、そんな感じがしました。「ハッピー・スタディ・ライフ」は、うん、かぁいいツンデレ娘は人類の至宝ですねえ。

lowlife―「futuredays(+)」
http://picnic.to/~kashmir/

まんがタイムきららMAXに連載している「○本の住人」が、いかに遠慮して、我慢して、頑張っているのかというのことが妙に実感できます。でも挫けないで! 応援してますから! 虚無の大海をぐうたら漂う夢遊病院船から気まぐれですくい上げたような生臭いなにかが、無邪気にアホらしくて、ときどきどきりとしてしまう。メガネをわざと掛けずに世界をぼやけてやり過ごそうとするのとか、無限にさまよい込んだのならいっそ欠かせないハッピーターンの病み付きっぷりは、共感というかそのまんま僕だなぁ。