ひなめいど

ひなめいど (まんがタイムきららコミックス)

ひなめいど (まんがタイムきららコミックス)

僕が「まんがタイムきらら」を読み始めた頃に、終了してしまった作品。

働かないのにメイド喫茶に通っちゃう兄貴のため、住み込みで社家のメイドになったひな子。かわいいけどちょーっとオカシイ先輩たちに囲まれて元気にやっています!健気でオカシイ☆超ハイテンションメイド4コマ!!

この4コママンガは正直、大して面白くはありません。打ち切りもやむをえなかったのかもしれません。貧しいだけに健気で比較的まともな妹ひな子を中心に、どこかで見かけたような味付けのヒロイン(メイド)たちと、ひな子に一目惚れした変態お坊ちゃまの繰り広げる屋敷内のどたばたは、可愛らしいもののどこか安っぽく。自慢のハイテンションは思ったより空回り、萌えが浮いてしまって結果えげつない印象、むしろ疎疎しい気分にさせられます。どうしてか、それらの"情緒"を等身大で味わう"地点"が用意されていない、あるいは見出せないのです。
本来ならこのご主人様社裕也に移入できればよかったのだろうけれど、オチなく和みもしない徹底して変態、故もなくひな子にメロメロのお坊ちゃまは読者が共感できるようなシロモノではなく(珍妙な生物)、お約束性格のヒロインたちは言わずもがな。ただ鑑賞するだけの作品にしてはキャラクターデザインは稚拙だし、キャラ描き分けの不徹底さはストーリーの把握を困難にし、特に生気の感じられない空ろな瞳が怖い。面白いつまらない以前のレベルで、読者がどう楽しんだらいいのかよくわからないんです。
そんな中、主に屋敷内で進行する"親しめないくだらなさ"の外側にあって、ひな子がメイドとして働くことになった元凶ともいえる兄貴が、妙におかしい。諸悪の根源のクセしてこの作品にあってたったひとつの"救い"ともいえ、働きもせず妹に苦労をかけるダメ人間っぷりの滑稽さと、裏表のないバカさ加減がどこか憎めない兄貴のキャラクターに、僕は無性に親しみを感じてしまうんですよね。
 それは言わないでくれ、妹よ……
僕がこの単行本を買ったのは、実は兄貴とマリーア(ツンデレ)のやりとりを堪能したかったがためだったのです。だというのに、マリーアは物語の最初から登場していたわけではなく、作品の人気がやばいのでテコ入れのための新キャラだというじゃありませんか。詐欺だ……。
個人的な解釈としては、兄貴とひな子の貧しくも微笑ましい絆をベースに、マリーアの暴力的なツンとそこはかとないデレ、くっつきそうでくっつかないひな子と裕也の交流をストーリーの動機として、それら舞台設計の元で他の個性的なヒロインメイドをアクセントに、萌えとハイテンションとちょっぴりの和みを組み込んでいけば、作品としてより素直に長く楽しめる作品になったんじゃないかなと思います。
打ち切り最終回の前回、兄貴とマリーアのなりゆきでこぼこ生活話が、僕にとってはこの作品の唯一にして無二の満足できるお話でした。まぁそうだろうと思っていたけどね。アンケートで「面白い」にチェックしたその次の回で最終回と言われたとき、もしかしたら僕はショックだったのかもしれません。「よっし、これから面白くなりそうだー」と思ってたところだったのに〜、ってね。