ALI PROJECT 神々の黄昏

神々の黄昏

神々の黄昏

オリジナルアルバムというよりは、クラシック音楽と自身発表の旧楽曲を対等の価値でフィーチャーした"ALI PROJECTトリビュート"アルバムとでもいうべき内容。彼女と彼はどこまでもナルシスティックで傲慢で芳醇、夜の薔薇園で月光にほの浮かぶ自らの姿に恍惚としながら棘で手首を切って倒れているような音楽です。生きているのか死んでしまいたいのか、よくわからない。存在の希薄さと曖昧さが途方もなく美しいのだから、まったく困ったものです。
アルバムだというのにシングルで発売した楽曲を1曲も収録していないというのは、(レーベルの問題があるのだろうけれど)いかにも完ぺき主義のALI PROJECTらしい。ひたすら甘美な旋律とうっとりとするような曲調、そして薫り豊かなストリングスで埋め尽くされた美意識至上の音楽は、時代錯誤的な宮廷音楽のようですらあります。そんな中にあって「神の雪」のヒロイックさはひときわ鮮烈で、艶やかな弦楽四重奏がなんともせつない。
そして、エリックサティの有名ピアノ曲をカバーした「JE TE VEUX」は、翻ってなんてALI PROJECTらしい楽曲でしょう。滑稽で純粋で変人じみたサティの音楽とその愛情表現は、考えてみればALI PROJECTの音楽とその美学に通じるものがあるのではなかったか。自身思い入れの深い曲だけあって、初聴でこの曲が出てきたときは思わず天を仰いでしまいました。良かった、ありがとう。