川田まみ SEED

鋭角的な、切れ味ある声質と強烈なテンションで聴き手の聴覚を麻痺させておいて、その独特なビブラートでヒロイックな切情をしとど流し込むという、"悪質な"ボーカルをとことん満喫できる良くも悪くも完成度の高いアルバム。息が詰まりそうで、堪らない。
前奏曲の直後に「緋色の空」「radiance」、アニメ主題歌として発表済みの楽曲を立て続けに持ってくることで、名実共に聴き手を川田まみ音楽へと瞬時に引き込み、そうしてからアルバムタイトルともなっているポジティブバラード「seed」を繰り出してくるあたり、手馴れたもの。
空間浮遊的で途切れのないグルーヴ感に、空虚な哀しみを染みこませ、ウケの良さそうなメロディを主軸に拡散する電子サウンドは、しょせんI've謹製で安直だといえばそれまでですが、好きなものは好きという意味で、個人的に批判するわけにもいかない。また、「precious」「昼下がりの午後」に感ぜられる少女らしい無邪気な温かみは、川田まみというボーカリストの等身大を意識させるし、感覚を研ぎ澄まさずにはいられない楽曲を中心としたこのアルバムではとても貴重。地を確かに踏みしめながら清々しい開放感に酔いしれる「you give」は、「SEED」と並ぶ印象的なナンバーとして指摘しておかなければなりません。
アルバムとしても、楽曲それぞれもボリュームたっぷり。サウンドの空想性が歌詞のリアリティを阻害しているという宿命はあるものの、この心地よい聴後感は何者にも代えがたい。ぶっちゃけ、川田まみというボーカリストが大好きなんですよ、僕は。