米良美一の過酷な人生に涙する

フジテレビの「Dのゲキジョー米良美一の回を見る。幼少時代の苦難には、再現ドラマとはいえ涙が出ました。「自分がいなければ両親を悲しませることはないのに」と小学生に思い詰まらせる世界とはいったいなんだ。松田聖子の歌が彼を救い、歌の道へといざなって、音大現役合格→首席卒業という快挙をさらっと流してしまうのも圧巻。
僕は多少合唱をかじっていたので、カウンターテナーがどれだけすごいかよくわかります。もちろん憧れてしまうし。世界的にも貴重なカウンターテナー、日本が誇れる素晴らしい声楽家を、身体がどうとかで揶揄するなんて恐れ多いことです。神の右手にイボがあるのを人は馬鹿にするかっての。
精神的なショックで美声を失ってしまったこと、それを5年の歳月をかけて取り戻したことなど、あまりの壮絶さに、みのもんたが司会するような番組で取り上げるべき事柄でないこと甚だしい。もちろんあの番組がくだらないとは言わないけれど(僕も好きでよく見ますしね)、せめてNHKのドキュメンタリーとかで、じっくりと、軽薄な再現ドラマではない、本人への静かなインタビューを中心に、故郷の原風景の映像にもこだわり、豊かな叙情をイメージさせて欲しかった。フジ子・ヘミングのときみたいにね(タバコの匂いが漂ってきそうなくらい、あれは濃厚で密接なドキュメンタリーでした)。
せっかく自身の壮絶な人生と、熱い思いを初めて告白するというのなら、番組を選んで欲しかったなあ。再現ドラマってのも、わかりやすいけれど、わかりやすいだけに、いろいろなことが露骨で安っぽく感じられてしまうんですよ。「こたえてちょーだい!」に寄せられた主婦の悩みを発表するんじゃないんだからさあ。
ウチの母親も好きだという「ヨイトマケの唄」。美輪明宏がいかに美少年だったかを聞かされる。とはいえ、米良美一が「自分はジャニーズからお呼びがかかるくらい美少年だと思っていた」という下りには笑ったなあ。後の細木数子の番組で光GENJI諸星和己が出てきたときはさらに笑ったが……。