テレ東日曜朝8時半の意志

 本日放送のテレビ東京アニメ「メイプルストーリー」、第21話「父さんからの手紙」を見たでしょうか。
 僕の中では、第7話「母さんは大どろぼう」に勝るとも劣らない、しみじみとした好いお話でした。まるで25分とは思えない、ちょっとした劇場版アニメーションを思わせる清々しく心に残る味わいに、僕はむやみに"うるうる"しちゃってましたよ。
 仲間に対する揺るがない信頼と、親子愛。さらにはニーナが初めて抱いた本当の寂しさと、アルへのほのかな恋心――。ひとつひとつがそれこそ大切なテーマを、これほど凝縮して、なおかつわざとらしかったり破綻することのない絶妙な演出は、まったく素晴らしい。
 それはもちろん、今までの話で彼らの人となりを誠実に描いてきたからこそです。

「アル……。別にケンカで離れ離れになったわけじゃないのに、突然近くからいなくなっちゃうとこんなに寂しいんだ。そんなこと、考えてみもしなかった……」

 アルの靴を見つけると、いつもなら"しれっ"と魔法で宙を浮いているニーナが"がむしゃら"に沼を突き進み、アルと再会すれば思わず抱きついてしまう。「バローたちが大変なんだ、早く!」とアルに手を引かれたときのニーナの表情も、露骨に頬を赤らめたりするのではなく、どうしようもなく頬が緩んでしまうという、本当に心からうれしそうなその様子がひどく共感的です。
 また、為すすべなく底なし沼を沈んでいくバローたちは、頭のてっぺんを残すのみになっても、

 「私はまだあきらめんぞ」
 「そうだったな」
 「アルとニーナが帰ってくるまでは」
 「信じ続けるさ」

 と、口をぶくぶくさせながらアルとニーナの救援を信じて疑いません。それは今までのエピソードがあるからこそ、彼らの本心であると視聴者もまた信じることできるのです。
 仲間への友情と大切な想い、すべてを信じるということ。
 テレビ東京の日曜朝8時30分のアニメ枠は、とても明確なテーマが課せられているような気がしてなりません。それともたまたまの偶然か、僕が勝手に前番組と重ねてしまっているだけなのかもしれませんが(おそらく後者でしょう)。
 バローたちが沼に嵌まってしまうという事態に、「友だちがピンチなのに置いていけるわけがない」「仲間を見捨てたりしない」と、ひとりでなんとかしようとするアルに対し、バローはこう言うのです。

 「友情や信頼も大切だが、他にも大切なものがある。それは……、それは冷静な判断力だ!」

 アルは、冷静な判断力をひとつの経験に即して教示され、すべての仲間を救うことができた。
 シモンは、仲間を信じ、みんなの熱い想いすべてをドリルに乗せ、冷静な判断力によって世界を救うことができた。
 ということはアルもまた、シモンのように最愛の存在を失ってしまうんでしょうか。
 いや、そもそも父親を失ってしまうところから彼の物語は始まっているんですが。シモンが二度の喪失を味わっているように、アルもまた、父親と平凡な再会を果たせるとはとても思えないのです。
 なんて、「天元突破グレンラガン」と重ねて見るのは止しなさいっていってるのに。