「ICO 霧の城」の本(宮部みゆき著)を読み終わりました。

まぁ正直、大して面白くはなかったですね。著者個人が原作ゲームをプレイして湧き上がった妄想を好き勝手に膨らませた物語(その好き勝手膨らませ具合がさすがは小説家なんだけど)、新鮮味のないファンタジー性、大仰で難解な装飾言葉の羅列、原作のどこにも描かれてない埃臭いテーマ、なんか違う、全然違う。

 霧の城は霧が晴れないから、霧の城なのであって、「ICO」は謎が晴れないから「ICO」なのだろうか。少なくともこの本を読むと、「ICO」の謎は晴れている。そのこと自体はよく練られているし、意外性もあるし筋が通っていて感心するんだけど、それがひどく味気なく、むなしく思える。

 そもそもゲーム「ICO」の魅力が「言葉では語られないもの」である以上、小説によって、言葉で語ろうとした時点でそれはもはや「ICO」ではないのかもしれない。エロゲーやギャルゲーのように言葉で語るという面をもつゲームであるなら、いくらでも小説化しようがあるのだろうけど。間違いなく「ICO」という作品に限っていえば、プレイヤーと「ICO」の間にもったいつけたような壮大な物語は必要ない。緻密に築き上げられた世界観も必要ない。それらは言葉にするものではなく感じるものであり、プレイヤー自身が創造するものだからである。

 そういった意味で、この本は同人小説的である。良い意味でも悪い意味でもね。つまりいい暇つぶしにはなった、ただそれだけのこと。わざわざamazonに注文して読むような本じゃあ、なかったね。