コンプリート、しました。
 決してキレイではない恋、ゆえに酷く美しいヒロインたち、主人公にまつわる戦慄的な真実、それらを包み込むまどろみのような、子供じみた奇跡とメルヘンの物語。そして、やっぱりフォーニは、まさしく岡崎律子さんでした。
「忘れて でも忘れないで」
「思い出さないで でも思い出して」
 音の妖精フォーニ。彼女はクリス(主人公)に、音楽を通してあたたかさとやさしさを与え、音楽を奏でることで彼女自身も生き生きと輝いていた。そんな関係が素晴らしく、幸せだった。フォーニを岡崎律子さんに、主人公を僕自身に置き換えてみて、それがいかに素晴らしく、どれほど幸せな関係であるのかが、いっときの感情移入としてではなく、経験と体験と感覚によってまざまざと思い知らされ、そうして、どうしようもなく、岡崎律子さんがもうこの世には居ないのだということを思い知らされます。
 この作品が岡崎さんの生前に制作され発表されたなどという、あまりにも出来すぎな話を現実として許容しなければならないのだとしたら、僕はこの作品をゲーム作品として批評することは、たぶんできないんじゃないかと思います。誰にとってか残酷すぎるし、誰にとっても美しすぎますよ。