緋色の空

アニメ「灼眼のシャナ」OPテーマ曲。
この曲、アニメのオープニングを"食って"ます。この音楽自体が重厚でドラマティックな物語を内蔵しているので、OP映像がただの"背景"に追いやられてしまっているのです。
まずなにより、川田まみさんの、心情をビブラートへ安易に解き放たず、切なげにしゃくり上げているかのようにフレーズを切る特徴的な歌唱が、ときに突き離すように、あきらめ、ときに抱き締めるように、満たされる。情念とでも呼ぶべきほとばしりを自在に聴き手へ措定します。共有される心のゆらぎ、とはいえ揺るがない伸びやかな発声が、可憐で、凛として、そして美しい。透き通る熱い演奏に益々研ぎ澄まされたボーカル、ダイレクトに伝わってくる感情が、なにより"痛い"のです。
内面と現実が音楽的に対比されることで厳然と紡ぎだされる世界と、心象は、旋律というよりもはや物語であって、"まみえる"僕らに息つく暇すら与えません。物語の幕が閉じたあと、「ああ、これは音楽だったのだ」ということにはたと気づかされる、そういう"感覚そのもの"でありました。
アニメのほうは、原作不読で観ておりますが、どうなんだろう。今のところ「つまらなくはない」といったところでしょうか。原作不読ながら、もっとすごい作品になるべき素材であるような予感がします。そもそも、せっかくそんなにもいかめしい世界設定なのだから、もっと重々しい作品であってもいいような気がするんですよね。まぁ僕自身そういうのが好みってのもあるんですけど。
主人公が、その自らの運命に対する認識がどこか軽くて、シャナが、その自らの宿命に対する重みが軽薄なツンデレ模様でうやむやになっているのが残念でなりません。もっとこう、救いがたいような運命や奈落をどっしりと描くこと、いわばどん底に足を着いてにじり上っていく過程にこそ、ツンデレ甘甘恋愛青春劇がオリジナリティをもって生きてくると思うんですよね。
つまり、「シャナやさしすぎ、減点」と言いたいんでしょう、僕は。とはいえ、僕の蓼好きに自身縛られて観るのもよくないんですけどね。
今後に期待。川澄綾子に期待。