「悪魔様へるぷ☆」最終回

先月号で告知があったとおり、「悪魔様へるぷ☆」が今月号の「まんがタイムきらら」で最終回を迎えました。
1頁目と、ラストの2頁が通常の漫画となり物語的勝負をかけてきてはいるものの、その結末は、結末と呼ぶにも値しない、夢オチに準じるくらいのあどけない拍子抜けっぷりで、それは確かに微笑ましくあり、がっかりするところでもあり、お世辞にも完全燃焼というわけにはいきませんでした。ある程度覚悟していたところなんですけどね。
「悪魔様へるぷ☆」というタイトルにあるとおり、この物語の主役は悪魔であるルルーだけであって、他のヒロインたちやクリムは"その他大勢"の代表者でしかなかったというのが、僕が満足できない、一抹の寂しさを残す主要因といえます。
だって悲しいじゃないですか。それまで3巻分もの紙面にわたり、ヒロインたちとクリムとルルーは作品にとってはほぼ同じ立場で、いつもみんな一緒に、健やかな笑いやかわいいドジ、シニカルな乙女ちっくさ、ほっと和ませるオチを共にしてきたというのに、エンディングについてはたったルルーのみしか語られていないのですから。ルルーをいつまでも温かく囲んでゆく多くの村の人たち、その中で彼女と一番近しい、せいぜい代表者としての地位しか彼女たちと彼に与えられないというのは、どうしても悔しいです。
せめて、幾人かのヒロインについて、多少は将来についてのゆるやかな予感を盛り込んでくれても良かったんじゃないですか? ルルーの愛らしい結末とは別に、彼女たち各々のエンディングにも相応の敬意を払うべきだったんじゃないですか? 得意なことを見つける、市中で大切な役目を得る、誰かとの関係を深める、棚上げしていた目標を取り戻すなどなど。ただのベタなお約束でいい、ほんの触りだけでいい、終わりを告げる作品に住まう彼女たち、その性格に応じたそれぞれの幸せをそこはかとなく感じさせて欲しかった。これは贅沢なことなんでしょうか。筋違いの妄想なんでしょうか。
悪魔様ルルーがへるぷ☆するのは、スチカ、ノル、シェラ、マリー、ユン、クリムのそんな幸せ。ルルーの助けでみんなが幸せの可能性を見出し、みんながルルーに感謝し彼女の幸せを心から願った瞬間(奇跡)、ルルーは"人間"になれる。そんな歯の浮くようなファンタジーで十分だったのに。満たされるのに。舞台は教会で、彼女たちは神職だから、自分たちの幸せよりも他人の幸せに奉仕する立場だから、という言い訳を実践するかのように、取ってつけたような、「村の人たち」というあってなき漠然に物語の担保を設定し、結果うやむやになってしまった大切な人たちの幸せ。それは何よりも確かに描かれるべきものだったのに。
3巻分だろうが2話分だろうが関係なく対応できる機能性優れたあの結末は、それがある程度の清々しさを読者にもたらすものであるだけに、いっそ悪質なものと僕には映ります。「今さらそんな当たり前のことを言われても」という暗黙の了解違反。現実として大した事件もなく、ささやかな変化すら表立って感じられない、なんとなくそれまでのことを思い返し、気づかされるクリムを通した"読者のためだけの"エンディングは、その実、のほほーんと、読者の「こうあって欲しい」という素朴な思いを拒絶し、共感できる幸せのかたちをどこにも見出せないのですから、貴方はあまりにもやさしくありません。
萌え4コマというものが、物語よりもキャラクターに、美少女ヒロインたちの言動そのものに笑いと、愛着を抱かせるためのシステムだというのなら、美少女として描き登場させたヒロインたちの結末についても、責任を持って描き仕舞って欲しいのです。作品に終わりはあるけれど、キャラクターへの愛着に終わりはない。作品が終わるということは、ただ読者に"その世界"が見えなくなるというだけの話で、見えない世界で彼女たちは依然生き続ける。その永続未了の愛着を読者へ正常に接続するための"思いやりある措置"を、せめて望まれて最終回を迎えられる作品についてくらい、精一杯手を尽くして欲しいと願ったって、罰は当たらないと思うのですが、どんなもんでしょう。

悪魔様へるぷ☆ (2) (まんがタイムKRコミックス)

悪魔様へるぷ☆ (2) (まんがタイムKRコミックス)

悪魔様へるぷ☆ (1) (まんがタイムKRコミックス)

悪魔様へるぷ☆ (1) (まんがタイムKRコミックス)