兄妹はじめました!

兄妹はじめました! (1) (まんがタイムKRコミックス)

兄妹はじめました! (1) (まんがタイムKRコミックス)

モノクロだと結構好きな絵柄なのに、カラーになったとたん幻滅してしまうのって、ありですか?

家がお隣同士で幼なじみの《茜》(♂)と《葵》(♀)は、共に片親家庭。互いの親が結婚することで、ふたりは義理の兄妹になりました。
時は流れ高校生となったふたり、過剰に妹思いの3年生《高坂茜》と、しっかり者の2年生《高坂葵》は、都合で両親と離れて暮らしています。そして、《葵》のクラスメイトでお馬鹿な天然ハイテンション娘《大山萌葱》(♀)と、《茜》のクラスメイトでイマイチ頼りない兄の《大山緑葉》(♂)。この2組の兄妹を中心に、《萌葱》の幼なじみ《若葉弧金》(♂)や、《葵》《萌葱》の所属する料理部の先輩《朝霞真紅》(♀)をまじえて繰り広げられる、兄妹ドキドキ・ハートフルコメディ。

はてなに記載がなかったので、僕で簡単な紹介文を考えてみました。恥かしい。
以前にも書いたと思うけれど、僕は好きなんですねえ、この「兄妹はじめました!」。読者としてはとっくに、《茜》が妹《葵》のことを(多分に異性として)好きなことはミエミエなんだけれども、それをほとんど取り合わず、「妹思い」の範疇に押し込めて兄に素っ気なく接する《葵》、その普段的な他愛のないやりとりが、萌えながら落ち着けるんですよね。
しっかり者の延長線で、兄に対してもちゃんと線を引きながらそれでも憎からず思っている妹の態度が、微妙なようで安定していて、むやみにラブラブしがちなそのベタな設定をきりっと引き締めているのです。3コマ目で萌えさせて、4コマ目でオチを取る定型スタイル、安っぽく萌え逃げさせない構成が読者の予測範囲内で、そのほどよい甘さ、メリハリの効いた日常が実に心地よいんです。それでいてごくたまに意表をついて、4コマ目でオチを取らず3コマ目の萌えをスルーすることがあります。ここらへんが巧いなぁと思うんですが。
微妙な妹心がそうやって時折表出し、それが定型的ベタ萌えをさらに煽るのではなく、むしろなごんでしまうところがこの作品の醍醐味であり、ハートフルの肝であるわけです。先述した紹介文に出てきた登場人物の組み合わせで、劇中に秘められた全ての恋愛が余すことなく幸せになれるという甘っちょろいパズルは、それらの味わいを微笑ましく引き立て、何より恋愛好きで単純な僕には無性に嬉しい(《真紅》が《緑葉》を好いていることがバレンタインの回で明らかに)。
そんな予定調和的やさしさで塗り固められた2組の義理・実の兄妹をめぐる小さな世界で、肉親として、幼なじみとして、そして異性としての好意をさらりとしたギャグで軽く突き放し、それでいてほんわかとしたなごみで確かに認めあう。いつまでもそんな関係が続いて欲しいと思えるゆるやかな萌えと落ち着きが、「兄妹はじめました!」が、僕にはとても好ましい。これからも頑張ってください、カラーとかいいですから。