びんちょうタンO.S.T

アニメーション「びんちょうタン」サウンドトラック
アーティスト: TVサントラ
  出版社/メーカー: ジェネオン エンタテインメント
  発売日: 2006/03/24
  メディア: CD
不毛なことに時間を費やしてしまった……。はてなダイアリー使用者なら分かってもらえると思います。
アニメの1話を見終わって直後にamazonで予約注文し、発売日に購入して以来、ウォーキングエクササイズのBGMとしてほぼ毎日聴いています。僕が大好きな岩崎琢音楽の、僕好みな楽曲で構成されているのだから、僕にとっては夢のようなベストアルバム。弦楽器・木管楽器による正統的管弦楽に端正なピアノを織り込み、シンセサイザーで味付けするアニメサントラお馴染みの態度に、オンド・マルトノを始めとする素朴で郷愁的なサウンドをうららかに注いで出来上がったこの音楽は、どこまでも柔らかく、ひょうきんで、何よりまぶしい。
強いメッセージ性を帯びた作品ではなく、退屈なほどのんびりとした山奥の自然と生活を加工することなくありのまま映し出すフィルムは、例えば環境音楽然とした綺麗なサウンドを無難に添えるというような態度に陥りかねません。けれどこの「びんちょうタン」の音楽は、綺麗というより美しく、無難というより人懐っこい。それは遠く見渡す山々への情緒と、足元にある名もなき草花への愛着が等身大の生活観にごく馴染んでいるような、まったりとした一体感を醸しだしています。
鼻腔をくすぐるぽかぽかとした音楽。停曲したあと劇中の静穏な余韻がまた、鳥の鳴き声や風が枝葉をすすぐ音をふんだんに含んでゆくようで、アニメーションがまるで僕らの聴覚を全身感覚へと押し広げていくかのよう。聴こえてくる音楽が素敵で、聴こえてこない"音楽"も素敵。もっと言えば「びんちょうタン」とは、見るよりもまず聴くべきであって、嗅ぐべきであって、触るべき作品なのではないかと思うんですね。
何を聴く、何を嗅ぐ、何を触る、それは視聴者が考える。僕らが考えるうちの、耳を澄ませるためのヒントが、このO.S.Tには込められているに違いなく、とはいえたったそれだけのことなんだということです。