たまたま回した教育テレビで、藤子不二雄がこんなことを言っていました。
のび太は本当にダメな人間だけれども、ひとつだけ良いところがあります。それは、たまに反省することです。『もっといい人間になりたい』と思うことは、とても素晴らしいことだと思うんですね」
毎回毎回、同じような展開で同じように失敗しているのに、それでも深刻にへこたれず、引きこもっていじけずに次回にはのほほーんと登場しているのび太を見ていると、「もっといい人間になる」ということのやわらかい信念を読者は感じざるを得ません。「のび太のようにはなりたくない」と思いながら、それでも心のどこかでのび太のたくましさに惹かれているのを否定できないのは、自分のみじめさをこれでもかというほど暴かれて、非難されて、それでものび太はいつまでも、どこまでものび太であり続けてくれていることへの、淡い感謝。
のび太いが毎回懲りずに繰り返す、幼稚で愚かなそのくだらなさに、僕らは日々の現実とか、体裁というものにがんじがらめにされている自分自身を、笑い飛ばしてしまえる"ふつつかさ"を、見つけているような気がするのです。――それにしても、のび太論はキリがない。まぁそれは、結局自分についての振り返りだから…。