最近よく聴いている島みやえい子の「ULYSSES」では、「Vanilla」が妙に気になります。広大な抒情がたち並ぶアルバムを、たくましくもしなやかなボーカルが耳にどっしりと響く、そのなかにあってとびきりの神秘性を感じさせる曲。あどけなくて可憐なオリエンタル風曲調に、ごく自然に笑みがこぼれてしまいます。
恋とか思想とか小難し目のメッセージを語る音楽は聴き応えがあるし、アニソンとか主張するものにはコト欠かさない音楽ばかりに親しんでいると、何も考えず大自然にどっぷり浸かっているような音楽がたまに、信じられないくらい染み入ってきます。
アホみたいな教条の宗教にのほほんとハマってしまう現代人の精神構造ってのも、それと似たようなものなのかも知れませんね。
その点、音楽というものは怖いです。目で見たものや手で触るもの、舌で感じるものは結構疑ってかかれるけれども、耳に聞こえてくるものは無条件で肯定してしまっているところがあります。目の前にメイドさんがいたって嘘くさく見えるし、メイド服に触れてみたら安っぽくてガッカリしそうだけれど、彼女が「ご主人様」と僕のことを呼んでくれたら、それはもう疑えない、彼女はメイドで僕はそのご主人様ということになってしまう。
耳は脳に一番近いはずなのに、いや、近すぎるからこそ「灯台下暗し」で無防備なのかもしれませんね。疑う(考える)ということから。