追悼、ロストロポーヴィチ

高校受験時分の目覚まし用にと聞き始めたクラシックで。僕が初めてチェロという音楽の、森厳で、濃艶な美しさに心奪われた、バッハの無伴奏チェロ組曲第1集「Prelude」ロストロポーヴィチ盤。あの安物の初心者向けシリーズ・聞き過ぎて間延びしたテープは、僕の手許から喪われて際限なく間延びし、最早永遠であり、僕の記憶の中にのみ留めおかれているという"不埒"は、チェロという真情の精神性を、耳朶を震わさず、回想するだけで、僕の軽薄な脳みそに重々刻み込んでくださるのです。なんて有り難い罰でしょう。僕は今後一生、心から満足できるチェロにはきっともう出会えないということなのですから!