アニメの恵まれた音楽

 アニメは幸せだ。だって、劇伴音楽はまずオリジナルなのだから。
 先日、土曜ワイド劇場「家政婦は見た!美貌の女社長、8000億の秘密…秋子に似たソックリ女の謎!」(長い!)を見たのだけれど、そこでの劇伴音楽は、あの有名なテーマ曲以外はすべて、「蟲師」のサウンドトラックからの引用だった。ちょっとアダルトなシーンに、あのしめやかで朴訥とした環境音楽が流れたりするのは、個人的に耐えられないものがあった。
 テレビの特番で放映される「家政婦は見た!」と「ルパン三世」は、新しくなるたびオリジナルの劣化コピー化が進んでいくような気がする。コピーにコピーを重ねて文字が滲んでしまっている台帳のような。まぁ、そういう期待マイナス値の確信をわきまえた上で、やはり見てしまうのが"腐れ縁"とというヤツなんだろうが……。金曜ロードショー特番の「ルパン三世」は、高校のときの部活の夏合宿で、ちょっと気になる女の子とかとみんなで見ながら盛り上がったもので、この年になってもなんとなく観てしまうのは、だから仕方のない話でしょう?
 サスペンスドラマは、気合の入った作品なら劇伴はオリジナルだが、そうでもない作品ではよくアニメのサウンドトラックあたりから引用される。それはきっとサスペンスドラマの視聴者層と、アニメの視聴者層が重ならないからなのだろう。それはわかる。これがワイドショーやバラエティ番組であれば、既存の音楽作品・サウンドトラックから選曲されるのも一向に構わないのだが、しかしドラマは作品であって、作品であるからには、やはり音楽はオリジナルであってしかるべきだと思うのは、ぜいたくな話なのかなあ。
 テレビ番組の選曲担当さんにはマニアックな方がけっこういる。いつだったか、何かの番組内の北海道特集に「北へ。」のあの有名なテーマソングが使用されていたし、未だに某朝のニュース番組では「カウボーイビバップ」の「Tank!」がコーナージングルとして使用されているし、先日も「サクラ大戦」の初期のボーカルアルバムから、真宮寺さくらが歌う「さくら」のイントロ(琴の演奏部分)が流れていた。平日の日中テレビ番組を見ていると、その手の音楽を聞かないことはない。現在放映中のアニメで、発売されたばかりのサウンドトラックから引用されることもあるから驚きだ。アニソンのインパクトがあるイントロなどもワンポイントでよく使用される。
 気がついてしまう僕が悪いのか。いいとか悪いとかいう話ではないけど(そんな時間にテレビ見てるなよ)。だからアニメは幸せだという話。まあ厳密に言えば、オリジナルとはいえ、アニメ音楽(サウンドトラック)の内容は限りなくパロディに近いんだが……。今期はそれほど気になるアニメ音楽はないですね。「ぼくらの」の野見祐二は手堅い、「黒の契約者」の菅野よう子は期待はずれか、斉藤恒芳担当の2作品はいずれ押さえておきたいところ。