「三者三葉」? 荒井チェリー

 なんとなく気になって調べてみたら、新刊が発売されていたらしいので購入しました。
 三者三葉 5 (5) (まんがタイムきららコミックス)
 これで5巻目。既刊の4冊はとっくに揃っていて、ひそかに僕は「三者三葉」ファンなのでございます。きらら系列の雑誌はもうずいぶん読んでいないけれど。
 僕の知っている萌え4コマ作品のなかで、この「三者三葉」ほど少女マンガらしい作品はなく、男のロマンを風刺して素知らぬ振りする"女の子同士"のくだけた世界観は、女の子の温泉入浴シーンでさえ全然えっちっぽくなかったりと、一見萌えとはかけ離れています。
 しかし、数少ないながらも登場している男性キャラクター、特に山路充嗣に萌えるから萌え4コマなのだという風に理解すれば、この作品を実にすんなりと楽しめることができるということに、つい最近気がつきました。
 落ちぶれたお嬢様西川葉子に健気に尽くす元使用人、多才なのに葉子のためにことごとく無駄遣い、苦労知らずなご主人様のおかげで始終胃の痛い思いをしながらもその一途な献身ぶりは、周囲にストーカーとして気味悪がられているほど。葉子様の敵には(自分の敵にも)容赦なく、裏では照も引くほどのブラック振りを発揮しているのに、普段は妙に常識的で3人娘にツッコミいれたりする山路。僕は気がつくと彼にぞっこん感情移入していて、彼には幸せになってもらいたいなあ、無理そうだけどねえ、などとやきもきしてしまうのです。山路大好き、執事(候補)萌え〜。
 これまでの山路は、双葉や照に弄られたり、捻り返したり引かせたりして僕をしたたかに萌えさせていたものを、この5巻から新キャラクター、山路と同じく西川家に仕えていたメイドで三十路なのに見た目15歳という奇跡の薗部篠(もちろん胸は照並ぺったんこ+無表情系)が登場し、彼女が山路に突っかかるんですね、なぜか。つまり山路萌えの新味が拡充された新刊、山路萌えの方々は四の五の言わずに買うっきゃない。
 ヒロイン3人については、もう性格なりポジションがずいぶん定着しちゃってて、笑いを取りにくるネタというか、ジャンルが分担・定型化し、オチがほとんど予測できてしまうので、彼女たち単独のコマはあまり面白くなくなっているというのは否定できません。
 けれど、山路をはじめ西川父、葉山光、臼田桜、今回からは薗部篠という充実した脇役キャラクターが、ヒロインずを横断するように介入し、あまつさえストーリーを牽引し、ときにかく乱し、あるいは油を注ぎ、意表をつくような言動で瞬間的に、一発芸的な彼女たちの新しい魅力=笑いを引き出しているところが、さすが5巻も続くだけのことはあるなと思うわけです。抜け目ない。
 最後に付け加えておくと、なによりキャラクターデザインが僕の好みなんです。荒井チェリーさんの色紙を読者プレゼントで何度狙ったことか…。まあ昔の話だけれども。