リバーズ・エンド after days 橋本紡


 ずっと書こう書こうと思っていて、結局書きそびれていた「リバーズ・エンド after days」の感想。
 この巻のあとがきで著者は、「この物語は5巻(前巻)で終わりで、この巻は当初書くつもりがなかった」みたいなことを書いているけれど、それは本当勘弁して欲しいところでした。だって僕には、「リバーズ・エンド」という物語がいったい何を描こうとしていたのか、はっきりと形になって言葉となって伝わってきたのは、この「〜after days」を読んだからなのですから。
 前巻までに繰り広げられてきた、壮大なようで根本的に現実的な視点を欠いていた、気宇が大きいようで致命的な欠陥を抱えていた、稚拙極まりないSF的物語構築は、作品随所で描かれていた少年少女の交流と心象風景の機微に慰められつつも、5巻で決定的に破綻しました。正直台無しだと思いました、最後のあの落ちには大笑いしましたから。
 でもこの6巻「〜after days」を読んでいくと、あそこまで無謀で浅慮なSFは、まるでドッキリ企画のようなリアリティのない救世主像は、彼ら彼女らにとって小さくも大切な自分たちの世界を見つめ直すための大掛かりな"しかけ"に他ならなかったのではないのかなと思えてきます。

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CooRie 秋やすみ


 以前ちょっと見ていたアニメ「美鳥の日々」の主題歌「センチメンタル」がちょっと気になりはしたけれど、でもアニメ自体しばらく見ていなかったから、不破さんの日記でたまに触れられているCooRie情勢を、間接的に覗いてた感じでした。
 アニメの主題歌をいくつも歌っている(らしい)割には、その音楽は自己主張というか"押し"的なものがとても弱くて、メロディアスで馴染みやすいんだけれど、けれんみがなくて素直なやさしさ。主題歌にありがちな"自分の気持ち突っ走り系"とは程遠い、いろんな眼差しに散らばっている思いが一進一退、ゆれうごくときめきがとても等身大で、なんだかくすぐったくなる詩。そして内向的な色合いのボーカルは、ずっと前に買ったお気に入りの、ちょっと色褪せてるけれど天気のいい日に干したてのシャツのような、新しくないのに新鮮な気分にさせてくれる、ほっとしますね。
 いい意味で外出着的ではない、日常的なかわいらしさが、染み渡ります。それでいて例えば「存在」、しっとりとした音色に誘われてさらさらと匂うようなせつない真実に、はっとさせられたりします。「えんぴつ」、こちらこそ、歌を、大切を、ありがとう。

Virkato Wakhmaninov ピアノ協奏曲第1番"蠍火"


 「beatmaniaIIDX11-IIDX RED-ORIGINAL SOUNDTRACK」収録。

 こいつぁあすげえっ!!
 しろさんの日記の上端に曲名と、「狂ったようなピアノは逆に心地よく」というコメントがちっちゃく書いてあって、それがなぜか妙に印象に残ってしまって、googleで検索していろいろwebでの紹介コメントを漁ったら益々興味の火に油を注いでしまい、ビートマニアの゛(濁点)も知らない僕なのですが、思いきって聴いてみました。でも今となっては、僕の無鉄砲な好奇心万歳。
 それは絶叫する苛烈で敬虔な叙情性、目の前の社会や現実みたいなうっとうしいコトを大量破壊兵器でめちゃくちゃにした後の僕の手のひらにひとしずくの愛。あるいは強迫観念的慕情、圧倒的なまでに迸る激情と思想性。ああ、僕はこういうピアノ協奏曲が聴きたかったんだよ!!と絶叫します、いや絶叫させてください。
 古典的な(ラフマニノフ等)ピアノ協奏曲の、「自分の感情を美しくポエミーに表現しよう」という志向が、なんとなく甘美過ぎる風になっちゃうんじゃないかなぁと思っていた僕としては、めらめらと凛然とした直情的な炎のゆらめき、激しく燃ゆるときもあれば穏やかにくすぶるときもあり、しかし着実に残酷に物質を炭化している、まさに"実在する現象が発生させるロマンティシズム"を、僕が無意識に渇望していたそれを、偶然にそして運命的に出会ったこの曲に、もう怒涛のように感じざるを得ないわけです。
 どういうことなのよ、これは。

星と桜見の休日

 午前中に床屋行って、昼ごはん食べて、ふと思いついたら、ちょうど上映時間だったので、市立博物館プラネタリウムを見に行きました。
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 実は「planetarian 〜ちいさなほしのゆめ〜」をプレイして以来、心のどこかでプラネタリウムを見たいと思っていたのですよ。そりゃもう、プラネタリウムの入り口にほしのゆめみちゃんの立て看が設置してあって仰天する夢を見てしまうくらい切実に。それに自転車で10分もかからない所に市立博物館付属のプラネタリウムがあって、観覧料500円(大人)というのはけっこう安いと思うんだよなぁ。ずっと前に渋谷のプラネタリウムに行ったことがあるけれど、そこは確か1000円くらい取られたはず。
 そんなわけで、プラネタリウム環境に恵まれている月森さんなのですが(しかもドームは県内最大級!(平成9年オープン当時))、実は行ったことがあるのは一度だけなのでした。それは確かこの博物館がオープンした当初で、そのときは無意味にきれいな案内員さんがいるなぁという印象。だいたいプラネタリウムなんていい年をしたオジサンがひとりで行けるようなスポットじゃないじゃないですか。いや、もちろん前回も今回もひとりで行ったわけですが…。
 いやまぁ、なんの変哲もない1時間弱でしたよ。ドームの中はカップルが1組に母子1組(しかもガキがうるさいので途中退場してた)、何人かおじさんがいるくらいで、僕も含めて総入場者数は両手の指で数えらる程度。まぁ平日の夕暮どきじゃこんなものかもしれないけれど、博物館自体の入場は無料のうえプラネタリウム観覧料は格安で客もまばら、これで9年も続けられるってあたりが、市立プラネタリウムの幸せなところだろうかねぇ。
 肝心のプログラムも、男の職員さん(がっかり)がまったりと冬と春の星座をいくつか紹介して、後半は「南極-ペンギンの見た星空-」という番組を流して、終わり。おじいさんペンギンの声優が八奈見乗児 だったよっていうくらいしか、書くことないなぁ。
 この南極ペンギンプログラムを7月まで延々と上映してるというのだから、そりゃ客の入りも少ないだろうよ。そんな学習教材的な番組流すくらいなら、1時間ひたすら当日夜の星の運行を、耳に優しい音楽の中で堪能させて欲しかったな。
 僕にとっては、まぁ、プラネタリウムの駆動音を間近で聞くことができたから、よしとします。もちろん心の中のBGMは「Gentle Jena」。

 その帰り道、市役所通りの桜並木があまりに満開だったのでちょっと撮っておきました。

 もうすっかり春ですねえ。というか冬、終わってしまったんですねえ…。もうあっという間に、夏ですねえ……。
 やだなぁ。