ヒロインがこの世界から消えるという、シリーズのテーマに直結する現象に対する安易な姿勢

 最近プレイした作品が原因なのではないかと思うのだけれど、「ONE2〜永遠の約束〜」という作品のテキスト或いは主人公像は、とても個性的で、というより一般的にいえば"弾け過ぎ"であるともいえるそのアクと、ただ面白おかしいだけじゃない、思いがけない見識のある鋭い視点にコクがあり、彼のキャラクターというものがとくに際立って映るのだ。それは「ごく普通の主人公」ではない分、そのごく普通ではない部分をキッチリと描いているという点で、強すぎる個性という粗事以前に、好感がもてるものでもある。
 つまるところ美少女ゲーム作品の主人公に与えられる属性としての、「ごく普通の高校生」云々といったものは、ただ「ごく普通じゃないとその『ごく普通じゃない』部分をイチイチ説明しなくちゃならないけれど、それをしっかりと描写していく自信がない、甲斐性がない」、そういった逃げの姿勢から生まれてくる消極的姿勢を表しているんじゃないだろうか。そうであるからこそ、物語を読み進めていくと、設定的にはごく普通であるはずなのに「それはちょっと普通じゃないだろ」といった疑問を割と多くの作品の主人公から感じ取ってしまうのは、そういった理由によるものなのかもしれない。
 「好き」とか恋愛的な描写を、読み手であるプレイヤーが共感できるとするならば、それはテキスト或いは主人公像の住まう日常の居心地の広さが影響を与えるのではないかと思う。主人公(或いはテキストの一人称視点)の認識と見識とによって構成されていく日常感覚の懐の深度、及びプレイヤー各人の感性如何によって、主人公とヒロイン2人の恋愛感情的なまなざしを素直に受け入れられるかどうかが定まってくる。主人公に感情移入することとはどこか違う、主人公を一個の個性としてプレイヤーがごく自然に認識し、受け入れることによって誕生する地平もまた、あるんじゃないかと勝手に断定させてもらえるならば、「ONE2〜永遠の約束〜」の主人公貴島和宏はまさにその地平に立っている存在だと僕は思う。
 無闇に大仰な主張はともかく、最低限僕がここで確信したいのは、この作品の描写・表現力は申し分ないんじゃないかということ。翻って、それならばどうして、ヒロインがこの世界から消えるというシリーズのテーマに直結する現象に対して、物語的に安易な姿勢を取ってしまっているのだろうか。
 深月遙編が特に顕著であるが、他全てのシナリオでもその傾向は認められた。
(1)ヒロインについて、世界から忘れ去られていくという恐怖を描写せず、消えゆく彼女たちに諦めや運命といった空虚なファクターを付与し、
(2)少しずつだけれども着実に忘れ去られていくという、前作にはあった、じっくりと”進行”し”深化”させていくテーマ性という方法論を捨て去り、ヒロインを潔いまでに忽然と世界から消えさせている。