岡崎律子さんに対してひどく申し訳ないゲームクォリティ、深く反省せよ

 岡崎律子さんの音楽のファンであり、Q'tronのシナリオのファンであるからこの作品をプレイし、そもそもミュージックアドベンチャーなどどうでも良かったし、というより「演奏パート?何それ」な僕の見解である。取るに足らないものである。どうしてもゲーム性を維持したいのなら、「技術力」「表現力」「指のスタミナ」「指のしなやかさ」「度胸」といった各パラメータを設定して、それをヒロインとのアンサンブルや自宅・練習室での個人練習で任意に向上させ、ヒロインごとに設定された理想値にいかに近づけるかで、卒業演奏の成功失敗が判定されるようなゲームシステムにでもすればいい。
 僕にはどうしても、演奏シーンのゲームパート化が物語と、音楽のさらなる表現可能性を奪っている気がしてならないのだ。演奏は演奏としてじっくり聴きたい、演奏からテキスト外のメッセージを感じ取りたい。それほどまでに岡崎律子さんが歌詞で表現しているメッセージは極めて"シンフォニック=レイン"的であり、その歌詞をプレイ後聴くボーカルCDの歌詞カードにおいてではなく、プレイ中に読み、味わい、感じることができたなら、それは「シンフォニック=レイン」というゲームにとって、物語にとって最高の演出となり、最上の幸せでもある。演奏パート進行中に歌詞は表示されるが、実際にゲームをこなしている人には味わう余裕がないだろうし、自動演奏プレイにすればじっくり歌詞を味わえますよというのなら、そもそも演奏パートは作品理解にとっての桎梏に他ならないではないか。
 そして、各ヒロインのグッドエンドで流れるエンディング曲(スタッフロール時に流れる曲)は、エピローグでこの曲を演奏するふたりのイベント絵幾枚と歌詞を織り交ぜてスタッフロール化して欲しかった。というかスタッフロールで星空にくねくねと漂ってるアレはなんだよ。意味わかんないよ。
 このように、僕でさえ思いつくようなそつのない演出すら、どこまでも欠けているこの作品は、ゲーム面で岡崎律子さんとQ'tronに対してひどく申し訳ないことをしていると自覚して欲しい。蛇足気味に言えば、既に聞いた声優の演技がバックログで再生できないことや、そもそもバックログをワンクリックで読めないのも不便だ。シーン最初のテキストがなぜか強制送りになってること、どのシーンでセーブしたか全く分からないセーブ/ロード機能など、システム面での些細な問題点も多い。イベントCGも絶対的に少ない。最後のは文脈とは関係ないけれど、絶対言っておきたかった。