真綿の日常

 大トロサーモンと大友宗麟って似てますよね。いや、なにがって、雰囲気とか…。
 先日、母親の野暮用に付き合って、車で国道沿いの工場地帯に赴いたときのこと。路肩に車を寄せてぼーっとしていたら、工場の煙突から真っ白な、雲みたいな煙が立ち昇っていました。そしてその雲みたいな煙が、雲ひとつない陽春のさらさらとした日差しにあてられて、交差点に影を作っていました。風もなく規則的な動きでぬぼーっとアスファルトに溶けていく軽やかな黒色の影を見ていて、「ああ、雲にも影はできるんだなあ」と、間抜けなことに僕は気がつきました。
 影も形もないと無意識に思い込んでいた、日常という得体の知れない何かの、ぬぼーっとした仮初の姿を垣間見たような無為の瞬間でした。