「常に100%の力を出し切れ。一度、手を抜く感覚を覚えると体から抜けなくなる」

 「あなたのたまご、もったいないよ」
 子育て中の友人が、私にそう言った。
 少子化が叫ばれている中、独身で子どもがいない私は、何かと肩身が狭く、、有形無形のプレッシャーを感じる。
 国からは、義務を果たせと言われているような気がするし、親は孫の顔を見たいという。
 「産めばいいのに」「早く産まないと、どんどんリスクが高くなるよ」「老後はどうするの」……。
 うんざりしていた。
 誰かのためや、自分の老後のために、子どもがほしいわけではない。
 でも、友人の言葉は素直に聞けた。そうか、もったいないのか。
 社会のために産むのではなく、私と、私の「たまご」の幸せを考えてくれるなんて、なんて優しい言葉だろう。
 毎月排卵される私のたまご。何だか急にいとしくなった。