携帯電話と自販機的店員

 若い人が、携帯電話で話しながらお店のレジなどの会計をしてもらっているというような光景は、いまどきどこにでもあるものなんでしょうか。
 マナーがなってないとか、そういうのはどうでもいいんだけど。あまり客の顔を見ないで業務を済まそうとする不真面目な人間からすると、そういうのは、脈絡なくいきなり馴れ馴れしく話しかけられたような勘違いを避けられないので、かなりぎょっとします。ある意味ホラーです。
 (やっべー、精神おかしい人きたよー)。思わず「はい!?」と問い返す声は軽く裏返っている。戦々恐々の面持ちでがばっと顔を上げて相手の顔をまじまじ見てみると。(携帯電話かよ!)。みたいな。
 それが30分や1時間もかかるものなら、途中携帯電話で誰かと話すというのもわからなくもないけれど、1,2分で済むような事務なのになあ。いや、それはそれでいちいち電話を切るほどのことでもないと思われているのでしょうか。
 確かにね。ちゃんと客の顔見て接客せいという話なんですけどね。わかってますよ。
 そういう意味で、電車の中で周りの人の迷惑顧みず携帯電話で話すような人は、まだマシなのかも。だってうるさいだけですからね。しかし店員を相手にしつつ携帯電話を切らないような人は、迷惑というよりも薄気味が悪いぶん性質が悪い。
 おそらく店員をひとりの人間として認識してないんですよね。「自販機でコーラ買うのに携帯電話切れっていうのかよ」とでも言わんばかりの態度は、失礼といえばものすごく失礼。なのに本人の物腰はいたって丁寧で、「お願いします」「ありがとうございます」などと律儀なリアクションを取ってくれるものだから、ちぐはぐというか、かなり妙な気持ちになります。
 これがもしイヤホンマイクで来たらどうするのよ。相手が携帯電話で話しているということが、傍目からじゃ判別付かなくなったらもう、精神病者エロゲー主人公としか客を認識できない。想像するだけでこわいよ。
 "プレイヤー"に話し掛けてるエロゲー主人公の独り言以外のなにものでもない独り言に「ねえ誰と話してるの?」と尋ねてしまえるヒロインの勇気に乾杯。
 僕はいえない、怖くて絶対訊けない、「すいません、誰と話しているんですか?」だなんて…。