高齢者介護施設内の虐待、市町村把握より10倍

高齢者介護施設内の虐待、市町村把握より10倍

 虐待に対する介護職員の知識不足の背景には、高い離職率も関係している。介護労働安定センターの調査によれば、介護職員の離職率は2割に及び、離職者の8割が3年以内に辞めている。これほど短期間では知識も蓄えられないし、施設側も「すぐ辞める職員に研修をしても意味がない」と思いがちだ。介護施設の労働環境の厳しさを指摘する声もある。だが、施設は、老後の安心が保障された場所でなければならない。

 介護職の仕事内容を見ていると、その待遇ぶっちゃけ賃金が、そこいらの店でバイトとして働いたほうがまだ高いというのは、おかしいですよね。とうていありえない話です。
 介護という職業自体が個人の自己犠牲・奉仕精神を前提として成り立っている現状、「そういうもんだ」という本人・雇用する施設側の認識と、「そういうものでしょ」という利用者側の認識の双方を改めていかなければ、老年人口の急増待ったなしの今日、最低限の介護環境を維持することは甚だ困難だといえるでしょう。
 今の仕事を続けていけるかどうか不安な状態で、他人のことなど真剣に思いやることなどできません。ぶっちゃけ、経済的に貧しければ心に余裕は生まれがたい。もちろん自己犠牲・奉仕の精神は大切だし基底にしつつも、それはあくまで心得、「給料は別だ」という切実で当然の声をあげていかなければなりません。
 介護職の国家資格としての要件を厳密にしたうえで、国家公務員に準じた待遇として、国庫から最低限の賃金を支給するくらいのことをしなければ、介護職の労働環境の適正な運営、しいては「低賃金当たり前」という人々の思い込みを実質的に打ち破ることはできないんじゃないかと思うくらいです。
 介護福祉士は、看護師に勝るとも劣らない専門職なんです。それは、看護師が医療として利用者をサポートするか、介護福祉士が生活として利用者をサポートしているかという、たたその方法論が異なるだけで、利用者にとってのクオリティはほぼ等しい。看護師と介護士が連携して患者の対応を行っている施設を見ていると、そのことがよくわかります。
 コムスンの一連の不正問題を考えると、企業がビジネスとして介護の分野できちんとした利益を出そうとすると、ある程度不正に及ばざるを得ないほど、介護保険制度というものが財政的に非常に厳しいということが浮かび上がってきます。
 介護保険が市町村単位の運営であることによって地域間格差が生じている現状を鑑み、少なくとも財政基盤の運営主体が市町村のままでいいのかということも考え合わせ、ただでさえ逼迫している保険財政で職員の人件費が賄われていること、そのシステムの欠陥が個人の尊い精神を迫害し、しいては利用者の不利益となってゆかざるをえないこの問題は、まさに国家的な視点で喫緊に取り組まなければなりません。
 その不幸と不利益は、今このとき、確かな誰かに降りかかっているのですから。