慌てず小銭探し 高齢者用レジを

 最近、私の財布は小銭でパンパンにふくらんでいる。後ろに並んでいる人を待たせるのは配慮が足りないと思い、支払いをたいていはお札で済ませているからだ。買った荷物と小銭が入ったバッグの重さによろめいてしまうこともある。
 お札で支払うことが多くなったのは、以前、スーパーのレジで小銭を数えていた時、店員に「後ろの方が待っているので早くして下さい」と怒気を含んだ声でせかされたことがきっかけだった。
 年を取ると目が悪くなり、指先も思うように動かなくなっている。小銭を出すのにはどうしても時間がかかってしまう。80歳を過ぎた母も、同じ理由で、1人ではスーパーに行けない。
 今後ますます高齢化社会が進むことを考えると、高齢者が心おきなく買い物ができるよう専用レジを設置するといった対策が必要ではないかと思う。(1/16付読売新聞朝刊)

 確かにスーパーでよく見かけます、小銭を出そうとしてなかなか出せないでいるお年寄り。せいぜい10秒とか、20秒程度のことなのに、そのすぐ後に並んでいたりすると妙にイライラするんですよね。
 とはいえ「後ろの方が待っているので」とせかしたという店員さんもすごい、勇者に認定してもいいくらいです。普通の感覚だと無言で生温かく見守るしかないし、よく出来た店員さんなら「慌てなくてもいいですよー」なんて心にもない言葉を添えるかもしれません。
 よっぽど並んでいたのか、それとも小銭を出すのにこの人相当時間がかかっていたのか――。
 レジで小銭を出そうとする客の意識としては、もちろん財布の小銭を整理したいというのが主なんだけど、なんとなく店員さんのことを思ってやっているというようなところもあるじゃないですか。小銭できっちり、あるいはキリのいい額で支払うことができれば、店員さんがつり銭を取り出す手間を省けるから、むしろ店員さんのために小銭を用意してやってるんだ、などという思い上がりも生じかねません。
 けれど店員さんにしてみれば、見ず知らずの客の恩着せがましい配慮でいたずらに時間がかかり、後ろで待たされた客が不機嫌になってあとあと不快な思いをする危険性を高めてしまうくらいなら、もう99円でも999円でもつり銭を用意するから!全然苦にならないから!という心持ちではないかと思われます。
 もちろん、なんでもかんでも専用のものを用意しろという意見はどうかと思うんですよ。いつだったか、優先意識丸出しのママさん@ベビーカーがエレベーターに目白押しで、30分も待ちぼうけを食らったという車椅子のお年寄りが、車椅子の老人専用のエレベーターを設置するべきだなんて意見を寄せていたけれど。
 相手とは到底わかりあえない、だから不快な思いをする前に棲み分けてしまおうという理屈は、わかりやすく最適な妥協案のようで、そういう意見を提出している側にこそ相手のことを理解しようという誠実さが見出せないから、どこか自己中心的な物言いに感じられ、あまり気持ちのいいものではありません。
 この投稿内容も、要するに「思いやりに欠けた店員の言動が不愉快、自分は高齢でいろいろ大変なんだ、理解しろよ」という本音でしょう。不愉快というのはわかるし、人間の老化現象に難癖つけるつもりは毛頭ありません。
 けれど、「後ろに並んでいる人を待たせるのは配慮が足りないと思い」と言っておきながら、小銭がたまったバッグによろけてしまいそうだとわざわざ言うのは、ちょっといけすかない。他人への配慮を気にするのなら、溜まってしまった小銭は自宅の貯金箱なりに移してなにも言わないでいてくださいよ。
 自分はするべきことをしていると思い込み、できないことは仕方がないんだとあきらめて、相手はつねに不誠実で礼儀知らずで受け入れがたいと信じている。こういう性根は老いも若きも関係ない、露骨でひりつくようなその人のひととなりに他なりません。残念ながら救いがたい。まあ僕も人のことは言えないんですけど。
 自分で買い物カゴに商品を入れていけば、合計額はだいたい予測がつくじゃないですか。3000円くらいだと思っていて1万円だと言われたら、レシートの内容を再確認してみることをオススメします。
 僕は、レジで順番がきたらまずコイントレーに予測した枚数+1のお札を置きます。そして店員さんが商品を次々POSに読み込んでいるときに、小銭入れに指を入れて中の金種を把握しておくんですよ。100円玉や10円玉、1円玉はだいたい何枚あるか、500円玉や50円玉、5円玉の有無という程度ならものの数秒〜かかっても20秒程度で確認できるでしょう。
 そして店員さんに「○○○○円になります」と合計額を告げられたら、そのままちょいちょいちょいと小銭を取り出して、コイントレーに落としていくんです。ピッタリあれば札を1枚引っ込めればいい。上手い小銭が揃わなければ、コイントレーを指差して「それで」と言えばいい。まごつくことはまずありません。

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 こうして書いてみるとけっこう複雑なことをしているようにみえるけど、ぶっちゃけ、貧乏なんです。会計が心配なんです。だから自然と会計中に小銭をチェックする癖がついてしまったという……な、泣いてないよ?
 その点100円均一のショップは合計額の推測がしやすくて便利ですよね。SHOP99だと1品税込み104円だから、個数分*4円で計算すればいいだけという。だからまあ消費税は、上がるにしても10%までにして欲しいですよね。13%とかになっちゃうと、4個以上買ったとき小銭の計算ができなくなりますから。
 というわけで、高齢者用レジを要望する前にできることがあるんじゃないかと思う次第です。POSに読み込んでいるときはタバコの銘柄とかをぼーっと眺めていて、いざ合計額を知らされてから「あ、○○円あります」と財布の小銭入れを漁り始めても、「もう遅いな」と提督にあきれられてしまいますよ。
 まあ、敬老パスが順次ICカードに切り替わり、さらにパスモなどのチャージ機能も併せ持つようになれば、年配の方が小銭を持ち歩く必要もなくなるかもしれませんけどね。