「サッちゃん」を歌うお祖母ちゃん

 童謡を歌う喜びを分かち合うことを目指して、「全国童謡・唱歌フェスタ」が先月、東京で初めて開かれ、仙台から長崎まで全国15の愛好グループが参加した。「サッちゃん」「雀の学校」など、美しく親しみやすい旋律が歌われる度に、子供からお年寄りまで客席の誰もが口ずさみ、温かい拍手を送った。
 「ここまで一体感を出せたのは童謡の力と思う。世代を超えて共通する歌を持つことの素晴らしさを感じました」(略)
 「美しく楽しく文学的で、聞く人も歌う人も喜べる。それが出来るのは童謡しかないと思った」(2/16付読売新聞)

 さすがは経験者というべきか、赤ちゃんをあやすことに関して妹はなかなか思い通りにいかないみたいだけど、母親はずいぶん手馴れたもので。妹にあやされても一向に泣き止まなかったものが、母親の腕に移されたとたんおとなしくなってしまうさまを何度も見せられ、妹は少し落ち込んでいるようですらあります。
 そんなことでどうする、もうすぐ帰って夫婦だけで育てるんでしょ。
 ちなみに僕もためしに何度か抱かせてもらいましたが、全然ダメです。機嫌のいいときならいざ知らず、泣いているのを止ませるだなんて芸当、逆立ちしたって無理ですよ。
 それで、数十年というブランクを感じさせない母親のその手並みの秘訣はどこにあるのかとよく観察してみると、なんてことはない、童謡を歌って聞かせているんですね。
 よく聞かせているのは「サッちゃん」。どうやらそれしか覚えてなかったみたいなんですけど。恥かしさを微塵も感じさせない愛情にあふれた(笑)態度で、実に楽しげに童謡を歌っている母親の姿は、なんとも微笑ましいものがあります。
 ふだんは「孫に『おばあちゃん』なんて呼ばせない」と豪語している母ですが、赤ちゃん言葉で馬鹿みたいなことを語って聞かせているその姿は、どこからどう見ても孫を猫っかわいがりする祖母でしかないですから。ああいう態度というか世界をどこでも照れずに作れるかどうかが、いい母親になれるかどうかの分かれ道なのかもしれません。
 妹にもそのうちできるようになるのかな。ちょっと想像できないけど。
 童謡は聞く人も歌う人も喜べるという。母親の歌う「サッちゃん」、赤ちゃんに聞こえているかどうかはわからないけれど、母親の醸しだす楽しげな雰囲気は皮膚を通して伝わっているのかもしれません。それとももうちゃんと聞こえているのかな。
 それにしても。妹のような下戸にならないように酒臭い息を赤ちゃんに吹きかけるのは辞めようよ。