いのちほとばしる祭りのあと

 先月出産をし、新生児を連れて実家に帰ってきていた妹が、この日曜日に自宅へと戻っていきました。
 もう二度と参加したくはない祭りのあとのような、大部分のホッとした心地と、認めていいものか多少悩ましい寂しさ。まるで生気が抜けたかように、以前はそれが普通だった静かすぎる我が家にて、僕は母ちゃんとこれほどまで会話をしなかったものかなと、奇妙に思っているところです。
 たった1ヶ月とちょっとのことなのに、ずいぶん経つような、それはかつて経験したことのない濃密な時間。正月に食べたおしるこは、あれはほんとうに今年食べたのか、それとも実は去年食べたものか、今はちょっぴり自信がありません。時間の感覚と、聴覚の主音量を戻さないといけませんね。
 赤ちゃんの泣き声がうるさくてよく眠れなかった、というわけでもないんですが(少なくとも猫の鳴き声よりかはマシだと以前にも書きました)、寝る前によく聞いていたのが、「FAMICOM MUSIC Vol.2」に収録されている「ふぁみこん昔話 新鬼ヶ島」の音楽でした。
 
 僕はこの作品のことをとても印象深く記憶していて、だから音楽も大好き。このサウンドトラックも、最初に発売されたカセット版はもちろん持っていたし、失くしちゃったけど。最近復刻したCD版を買って今は聞いています。
 ちなみにゲーム本編もディスクカードと、そしてファミコンソフト版の両方を持っていますよ。ディスクシステム本体もあるにはあるんだけど、さすがにもう動かないだろうなあ。
 ところで、当時僕は、ゲームの登場人物に名前をつけるという儀式にあまり馴染めませんでした。
 たしか「ドラゴンクエスト」では、その頃少年誌で連載していた特集記事に登場していた主人公の名前を借用したような……。そんなだから、「ふぁみこん昔話 新鬼ヶ島」で男の子と女の子の名前を決めるに際してずいぶんと悩んだのです。
 でも決めないと、ちょっとセンスのない名前にさせられてしまうことを知っていたので、何にしようかと考えてみたところで、そもそも本とかを読まない子だったので(それは今も変わらないけど)いい名が思い浮かぶはずもなく。不毛に悩み抜いた末、「ああそうか、自分の名前をつければいいんだ」と。
 男の子は自分の名前、ついでに女の子を妹の名前にしたのです。
 それなのに(?)あのエンディングでしょう。女の子は月に帰っちゃって、男の子だけがおじいさんおばあさんの元に戻るという――。
 つまり僕の「せつない」という感情は、あのスタッフロールと、あの音楽が原初なのですよ。
 そんなようなことをつらつらと思い出しながら一連の電子三律音楽に耳を傾けていると、赤ちゃんの文字通り全身を真っ赤にして張り上げる泣き声が、不思議と気にならなくなり、いつも通りの眠りにつくことができました。
 僕はいったい、ゲームの思い出話をしていたのか、それとも今の話をしているのか。
 馬鹿だな。本当どうしようもなく馬鹿で駄目なお兄ちゃんは、それでも心から願っているよ。
 三次元でもいい、健やかに育っていってください。
 ロリコンとかそういう問題は、今後前向きに検討しつつ善処するっつーことでひとつw