脱衣麻雀と「マッチ売りの少女」

 「マッチ売りの少女」という童話をご存知でしょうか。
 そりゃ知ってますよね、「馬鹿にするな」って感じですよね、ええもちろん、そうだろうと思ってました。
 でも僕は、この年になるまで「マッチ売りの少女」の結末を知りませんでしたよ。
 先日母親が妹の赤ちゃんを抱いていたときのこと。耳が聞こえているかどうかも定かではないのに気の早い母は、童話を語って聞かせています。その中に「マッチ売りの少女」がありました。

 年の瀬も押し迫った大晦日の夜、小さな少女が一人、寒空の下でマッチを売っていた。マッチが売れなければ父親に叱られるので、すべて売り切るまでは家には帰れない。しかし、人々は年の瀬の慌ただしさから、少女には目もくれずに通り過ぎていった。
 夜も更け、少女は少しでも自分を暖めようとマッチに火を付けた。マッチの炎と共に、暖かいストーブや七面鳥などのごちそう、飾られたクリスマスツリーなどの幻影が一つ一つと現れ、炎が消えると同時に幻影も消えた。
 流れ星が流れ、少女は可愛がってくれた祖母が「流れ星は誰かの命が消えようとしている象徴なのだ」と言った事を思いだした。次のマッチをすると、その祖母の幻影が現れた。マッチの炎が消えると、祖母も消えてしまうことを恐れた少女は慌てて持っていたマッチ全てに火を付けた。祖母の姿は明るい光に包まれ、少女を優しく抱きしめ、天国へと昇っていった。
 新しい年の朝、町の人々が見つけたのは、マッチの燃えかすを抱えて微笑む、少女の小さな骸であった。(マッチ売りの少女-wikipedia-より)

 「えー!『マッチ売りの少女』ってそんな悲しいお話だったのー!?」
 「そうよ。そんなことも知らなかったの?おまえは」
 僕はこのとき初めて、本当にはじめて「マッチ売りの少女」の結末を知りました。
 マッチ売りをさせられているくらいだから、最初っから不幸そのもの、だからお約束として最後はきっと幸せになるんだろうなくらいに想像していたんだけど、なんて救いのないお話!かわいそうな子!
 ちなみに、僕が「マッチ売りの少女」の幸福的結末を想像するにいたった原典は、中学生の時に通っていたゲームセンターで、プレイした脱衣麻雀です。
 それは童話をモチーフした内容で、1回戦が「マッチ売りの少女」で2回戦が「ジャックと豆の木」(ジャックはボーイッシュな女の子に)、3回戦は「赤ずきん」で、それ以降はもう覚えてません。まあ当時から麻雀は下手だったので、3回戦以降は進めなかったのかもしれませんけど。
 1回戦だけによく"お世話"になった脱衣麻雀版「マッチ売りの少女」の筋書きは、こうです。

 「マッチを買って欲しかったら抱かせろ」

 もうね、これ以上ないというほどわかりやすいお話でした。
 「足ながおじさん」の足を思いっきり短くして腹を思いっきり出したような英国紳士崩れが、「マッチ売りの少女」にこう申し出て、しかも麻雀で勝負。世界観もへったくりもないような内容で、勝つと、エッチ後とおぼしき「マッチ売りの少女」が1枚絵で拝めました。
 その後の「マッチ売りの少女」がどうなったかはゲーム内で説明がなかったけれど、シルクハットにステッキを標準装備した英国紳士がわざわざ出てくるくらいだから、オリジナルの方では"まとも"な英国紳士がきっと"正当な方法"で彼女を幸せにしてくれるんだろうと、僕はなんとなく思い込んでしまったのだと思います。
 例えば元歌を知らず替え歌のほうを初めて聞くと、その歌詞がオリジナルなんだと無意識のうちに思い込んでしまうように。しかも思春期の時分、どきどきしながら見たエロ本やら雑誌の内容は今でも克明に覚えていたりする当時のこと、あの鮮烈なインパクトが、今日に至るまで「マッチ売りの少女」のオリジナルに触れるのを無意識のうちに躊躇わせていたとしても、無理からぬところでしょう。
 昔"お世話"になったエロ本とか、大人になると恥かしくて触れたくないものでしょ?
 しかしアレだよなあ。
 エッチしちゃったら"脱衣"麻雀じゃないじゃん。