甘くて苦くてしょっぱいチョコレイト

 私の出生日は2月14日。今から60年前のその日、葉山で水兵をしていた私は、近くの別荘のお嬢さんからチョコを頂きました。私は誕生祝いと思い込み、なぜその事を知ったのかと不思議で、訓練の合間に訪ねてみると、母親から、娘は3月10日の東京大空襲で、本宅のある麹町で亡くなったことを知らされ、私のことを色々書いてある日記帳を見せてくれました。
 あの日が、バレンタインデーであったことに気付いたのは、復員後しばらくしてからだった。当時チョコは貴重品で、ひょっとして私は本命であったのかも。 *1


 今年の桜の季節に撮っておいて、でもここに掲載し逃していた写真を一枚、貼っておきますね。
 自分の無知と思い違いのせいで異性からの好意に気付かず、その想いを知ったのは、彼女亡き後の日記帳、というのは。既にこの世にいない女性の日記に綴られている、自分ことについての記述を読むときの感情、というのは。
 いつもあれだけ妄想しているというのに、こういう、肝心な人の気持ちなんて全く想像もつかないんだからなぁ。

*1:5/17付読売新聞[神奈川版]