馬蹄師と「大きく胸を開いてー」

 テレビで、馬蹄師(ばていし)の専門学校の卒業試験について取り上げていたんです。
 馬蹄師というのは、馬の足にはめる蹄(ひづめ)を製作する人のこと。馬によって足の形は微妙に異なるらしく、その馬専用の蹄を、鉄を延ばすところから作るという、それを生業にしている人がいるとのことで。そんなの初めて知りましたよ。
 言われてみれば、馬の足にはたいていU字型の蹄が付いているし、蹄を専門に作っている人がいるんだと言われれば、なるほど確かにそれは重要で、不可欠な役割だろうと(手遅れながら)思わされるものがあるけれど、そのための専門学校があるというところまでは想像が及びません。果たしてそれだけで食っていけるんですかね。
 さらに興味深いのは、その専門学校の卒業試験がですね、ひづめを付けていない馬の足の裏を10秒間見せられて、制限時間内に蹄を製作しろというんですよ。巻尺で計測するどころか、触ることも許されない、ただ見るだけ。それで馬の足にぴったり合う蹄を作れというんですから、無茶な注文です。
 しかし、やり遂げてしまうんですねえ、もちろん人によって優劣の差はあるけれども。
 見ただけで寸法がわかるというのは、よく考えると素晴らしい才能ですよね。
 それはたとえば学校の体育の時間、ラジオ体操に取り組む女子の「大きく胸を開いてー」のシーンを10秒間見るだけで、胸の寸法がわかるということですからね。正確無比のカップ精度は当の女子にすら恐れられ、というかむしろ参考にされ、男子の間では「神」と崇め奉られることでしょう。何の神かは知らないけど。
 あ。いや。そういうコトに関しては、何も優秀な馬蹄師でなくても男なら誰でもわかるものかな。
 見ただけで寸法や、形状を高精度で推測できるかどうかは、その対象にどれほど興味があるかということにつきるのかもしれません。
 ましてや、二次元美少女の胸については、巻尺で計測したり触ったりすることが許されないも何も、できないですから。外から見るしかないのですから。
 「神」になるしかないのです。