0-01-01から1ヶ月間の記事一覧

猫と猫屋敷と猫探偵

国ざかいに広がる大きな森のなかに、たいそう立派な館が建っていました。 この森の大半を治めているその館の持ち主は、この国のうちでも指折りの資産家でしたが、既に亡く、いまこの館に「人」は住んでいません。 この森を猟場としている狩人たちはこの「無…

この"プロローグ"を受け継いで始まるべき本編は、僕らの手に委ねられる

主人公の気持ちとプレイヤーの気持ちは、感情的な温かさと冷たさという意味で対称化し、それは互いに損い合うのではなくむしろ互いを高め合い、深め合っている。主人公と同一であり、かつ全く別の存在としてプレイヤーを位置づけることの可能なゲームという…

テーマを普遍化するために用いられる冷酷な非ゲーム性

この作品が機能的な意味においてもゲームであるのならば、作品で描かれているシーンはプロローグとして位置づけるはずではないだろうか。ヒロインの希望をその胸に受け継いだ主人公が、人類解放と地球再生のために立ち上がる、壮大で苛烈な大河ゲームが完成…

ゲームであってゲームでない アンビバレンツなゲーム性が目指すもの

この作品は"ゲームではない"。そもそもゲームとは何なのか、ここでゲームの本質について論ずるのはほとんど不毛なので辞めるけれど、簡単に表現してしまうと、ゲームとは、プレイヤーが、ゲーム側の用意したデバイスを任意に駆使することによって、物語及び…

ちいさく、みじかく、ささやかなゆめの物語

この作品は、小さいスケールのなかで非常に完成された、短いストーリーのなかで非常に感動的な、ささやかな訴求性のなかで非常に鮮烈な、美しくも悲劇的な叙情SF物語である。 退廃し滅亡を目前にした近未来世界を舞台に、冗長になりがちな世界観説明的テキス…

planetarian 〜ちいさなほしのゆめ〜

■プラットフォーム-Windows■制作-Key■発売日-2004/12/06(Yahoo!BBユーザーのみ2004/11/29先行販売)■攻略参考-あるわけない■クリア進度-コンプリート■最終更新日-2005/01/04■ネタバレ指数-80%

科学者と幸せの星

ある国に、天才的な科学者がいました。 彼は、誰も思いつかないような素晴らしい発想を、息を吸うたび思いつき、誰も取り組まないような素晴らしい発明を、食事をするたび成功させ、誰も作れないような素晴らしい装置を、眠りから覚めるたび完成させていきま…

あとがき

そうしてよくよく真面目に考えるに、恋愛をすることと、付き合うということのあいだに、”なにか”特別な事情があるのが中学生というものなのでしょうか。ヒロインが主人公の「付き合ってください」という告白を、自分も好きなのに敢えて断った、その心理的意…

「つまらない、かったるい、これが本当にトゥルーラブストーリーの最新作なのか?」 何度か繰り返しプレイしたけれど、僕の脳裏からこの否定的な疑問が消えることはありませんでした。プレイステーション2という上位機種へとプラットフォームを移し、想像に…

トゥルーラブストーリー3

■プラットフォーム−PS2■制作−エンターブレイン■発売日−2001/04/05■最終更新日−2001/12/10

毒を吸う木

町から離れた丘の先に、1本の大きな木が、まるで朽ちるように立っていました。 葉っぱは黒ずんでいて、木肌は灰色ににごり、木全体がたれ曲がり、あたりを吹く風さえその場所では嫌なにおいを運んできます。 近くに住んでいる子どもたちは、この場所には決…

半現実と、半空想の狭間の武勇譚

結局「Ever 17-the out of infinity-」における真のBlickWinkelは、笠原弘子の歌うエンディング曲が流れるスタッフロールの後のエピローグにおいて全ての登場人物の視点を"偏在"する存在のことであり、本編で倉成武と少年の視点で4人のヒロインシナリオを経…

実際僕らは"お兄ちゃん"だからな

つまり僕は考える。というより妄想する。八神ココシナリオの中盤で第三視点が発現(プレイヤーが主人公から離れて独立)した時からノベルゲーム形式を捨て、時間指定・コマンド選択型アドベンチャーゲームに移行すべきではなかったか。ブリックヴィンケルとし…

アドベンチャーゲーム多次元論

だが個人的に仕方がないで済ませられないのがプレイヤー視点の取り扱い方だ。そもそもゲームというものはプレイヤーの視点とその操作をもって"事をどうにか"してもらうために作り出される創作物であるのだから、それは物語の最大の謎にしてしまうものではな…

苦痛に満ちた日々と、かみしめる幸せ

確かに純物語的にみればそのトリックは大変衝撃的であり、大きな矛盾の中でではあるけれども数多くのシーン間では巧みに辻褄が合わせてあることが2ndプレイでは明らかになり、感心させられるし第一面白い。八神ココシナリオにおける倉成武視点と少年視点の意…

そして、Ever 17における"ブリックヴィンケルさん"

そして、話は本題である「Ever 17-the out of infinity-」に至る。この作品は数々の禁忌を犯してしまった。別に田中優美清春香奈の所業がどうとか言っているのではなく、プレイヤー視点の取り扱いに関してである。この作品のネタを一言で表してしまえば、大…

主人公の視点とプレイヤーの視点

そういえば昔、「EVE The Lost One」という作品があった。当時アドベンチャーゲームの傑作として評価の高かった「EVE burst error」の続編として期待の大きかった作品だったのだけれど、いざ発売されてみると散々な評価だった(当時は)。でも僕はこの作品がか…

Ever 17 -the out of infinity-

■プラットフォーム−PS2■制作−KID■発売日−2002/08/29■攻略参考−infinity loop■執筆日−2004/08/10■ネタバレ指数−100%

福音と耳の聞こえない少女

ある村に、耳のきこえないひとりの女の子がいました。 彼女は生まれたときから耳がきこえなかったので、この世界のいっさいの音というものをまったく知らず、そうするとしゃべることもできませんでした。 村の友達と仲良くなれず、いつもひとり家がある谷の…

プラネタリウムを出ていつも見ている夜空を眺めに行こう

「これが人工的に作り出した夜空だとはとても信じられないほどの臨場感だった。ただ、現実にありえないほどの無数の光であるがゆえに、これは人工物なのだという事を認識させられてしまうのだが。」 ヒロインとのデートで訪れたプラネタリウムについて、主人…

テスト期間というカレの人生、かけがえのないまがいモノ

主人公は、感情というものに対して馬鹿らしいほどに素直であり、愚直なまでに謙虚である。この主人公の人となりは劇中を通して変わる事がない(それはベッドの上でも)、この点が、彼の最大の魅力であり、僕にとっては純粋に羨ましく、共感できるというのでは…

主人公の心の器に不合理を注ぎ込むプレイヤー

"頭"は知識を詰め込むものであり、"心"は感情を注ぐものであるという。そして、"頭"は知識が詰め込まれていなくとも"頭"たり得るが、"心"は感情が注がれていなければ"心"たり得ない。物語開始当初の主人公は、頭は濃密だが心がない(空虚である)状態であるが…

変わらない世界、変わっていく主人公

これほどの怒涛なバグがありながら、あまつさえ修正パッチファイルも見つからずOS上の問題でまともにプレイすることができないのにも関わらず、わざわざOSを旧バージョンに入れ替えてまでこの作品をプレイすることに執着してしまったのは、この作品における…

ゲーム作品として論評するに値しないモノ

とにかくこの作品はすごかった…。何がすごいってそりゃあ、バグの質と量が、である。というよりこんな状態でよく発売することができたものだと、その並外れた無神経さに率直に賞賛を送りたくなるくらいのスバラシサ。この作品をプレイすることで僕は、作品内…

TALKtoTALK

■プラットフォーム−Windows■制作−Clear(web消失)■発売日−2002/02/?■攻略参考−無し■クリア進度−コンプリート■執筆日−2004/12/01■ネタバレ指数−50%

決められない男の人

ある町に、ひとりの男の人が住んでいました。 彼は会社に勤めています。その働きぶりはとても真面目で、有能でした。 彼は、上司に言いつけられた仕事を常に完璧にこなすことができ、誰に対しても誠実で、同僚からの信頼も厚いのです。 しかし彼は、自分ひと…

不思議な箱

ある豊かな国に、女の子がいました。 彼女の広いお部屋にはたくさんのぬいぐるみや流行のおもちゃが、ところせましと並んでいます。 ひとりっこの彼女が欲しいと言えば、パパは何でも必ず買ってきてくれるからです。 今日のお夕飯は最高級のステーキ。女の子…

「ゲームとして素晴らしい」と評価できることの幸せ

童話(メルヘン)は美しい、いつまでも心に残り続ける。それは子供の頃母親に読み聞かせられたお話ように。そしてそれは、Key作品の価値と、僕らの夢と、限界とを同時に示すものでもある。童話とは母と子の2人だけの世界で、母が子に読み聞かせるものであるよ…

童話であり続け、童話にしがみつくKey作品

Keyが創る作品は、童話(メルヘン)である。良い意味でも、悪い意味でも。これまで発表した作品は18禁であり、ヒロインとのSEXシーンが描かれていたのに、今作においては18禁ではなく全年齢対象とし、SEXシーンを描かなかったのは、童話(メルヘン)であることに…

古河渚以外のヒロインをより幸せにするためのゲームデザイン補強論

「CLANNAD」をこう解釈し、高く評価した上で、そのうえで僕はこう考える。作品テーマの源流と結びついている、変わることを拒み成長することを止めている主人公が各ヒロインシナリオで迎えるエンディングは、HAPPY ENDであってはならなかったのではないだろ…